高齢者向けのスマホ市場はガラ空きだが……

高齢者向けに携帯電話を探している。今までiPhoneを使っていて人にも勧めたのだが「電池の持ちが悪い」とか「画面が小さい」というのだ。確かに電池がへたった中古品だった。Android携帯を探そうとしたのだがこれがよくわからない。Android端末のシェアは日本では4割から5割程度だそうだが理由がわかる気がした。メーカーの数が多くそもそもどこで売っているかよくわからないのである。売り場がないのは少し意外だった。




家電量販店にゆくと暇そうな店員たちが話しかけてくる。彼らは実質的に失業している。携帯電話端末割引を武器に回線の乗り換えを勧めたいので端末は景品扱いだ。純粋の新規が少なく他のキャリアから客を奪う必要があるため市場は荒れに荒れている。

彼らが手持ち無沙汰にしている理由は二つある。一つは菅政権が携帯各社に割引を迫ったせいだ。大手は格安携帯サービスの進出しているので相対的に魅力がなくなっている。同じ料金でより多くのギガが使える大手に人が流れるのは考えてみれば当たり前の話である。もうすぐ値引き合戦が始まるだろうが卸で仕入れている回線は安くできないので端末を配るしかない。

次に新型コロナである。対面販売が怖い高齢者はもう家電量販店には近寄らないだろう。

メーカーはお客様相談室を閉じている。営業であっても電話での受付をやらない。そのため細かい違いがわからない。 iPhoneの最新機器(つまり最新OSが使えるもの)はわかるのだがAndroidはどこまでが最新とみなせるのかすらわからない状態になっている。

キャリアは相談を受け付けていたが「金がかかるばかりで老人は手間がかかる」ことがわかってしまったようだ。auの場合povoと同じサービス内容にすると8,000円以上になる。毎月5,000円以上は実は「介護料」だったことになる。

ネットで探そうとするとどうなるか。検索エンジンが広告とつながっている昨今、画面が携帯電話の広告ばかりになってしまう。しかもそのほとんどが他社と比較させないためにわざとわかりにくくしてある。意思決定を諦めさせる効果があるばかりで集客には役に立たないだろう。だが広告を止めることもできない。

諦めてAmazonで探して見たのだがここも何が最新なのかがよくわからない。最近ではOppo、Zenfone、Xiaomiといった台湾や中国系のスマホがたくさんでてくる。かつては「少し怪しい」と思われてた韓国系のサムソンやLGも日本と同じ高級路線にシフトしているようだ。折りたたみスマホなどの高級品ばかりが前面に押し出される一方で「超格安」のラインも揃えているが昨日が限定されていて決め手に欠ける。

こんななか、高齢者の多くは携帯電話の情報を家族に頼っているそうだ。このため家族がiPhoneを使えば「自分もiPhone」ということになる。これが日本でAndroid端末やMVNO(格安電話会社)が周知されない原因になっているのだろう。

政府はスマホ乗り換え相談所を作るそうだが、こうした商習慣がなくならない限りそれほど意味のある事業にはならないだろう。2022年にスタートするということだがその頃まで菅政権が続いていることを望むばかりだ。

おそらく、MVNO業者が生き残りたいのであればお互いに手を組んで分かりやすいプランを提供すべきである。だが、各社がバラバラに取り組んでいるうちは似たり寄ったりのサービスが乱立するばかりで問題は解決しないだろう。前回コミケやコスプレの例で見たが日本人は協力的なプラットフォームを作るのが苦手である。

ただし、スマホ業界にはまだ未開拓の領域がある。それがClovaやEcho Showなどのスマートスピーカーである。実際に高齢者にスマートフォンをやらせてみるとわかるが、高齢になる程スワイプやクリックなどの操作がやりにくくなる。ところが、今までのボタン付き電話(ガラケー)では画面遷移が複雑になり操作が難しい上に、シェアがあまりにも低すぎて開発がなかなか進まないという事情があった。

CLOVA Friends Mini

その間を埋めるのが音声認識技術だろう。CLOVA Frieds miniというくまちゃん型のスマートスピーカーを実際に買ってきた。セットアップさえしてあげれば子供と高齢者には使いやすい。手先が不確かでも声で操作すればよいからである。声で「今晩いつ帰るの?」などというとそのままLINEでメッセージを送ってくれるし天気やニュースなども教えてくれるという頼れるくまちゃんだ。

唯一の壁になっているのが高齢者の二極化だ。一部の高齢者はスマホを持ちたがる。彼らは「自分たちだけを年寄り扱いされる」ことを嫌うのだ。別の人たちは難しいことはわからないので電話とファックスでいいと思っている。その壁さえ乗り越えればこの分野には様々な可能性があるに違いない。

また、メーカーも高齢者向けの製品はやりたがらないようである。今回買ってきたスマートスピーカーも可愛いキャラクターを使い子供への読み聞かせを前面に押し出すなどしていた。「子供扱いするな」と考える高齢者も多いかもしれない。

CLOVA Frieds miniは実際には家族がリビングで使うことも多いようで「パーソナルな会話は見られたくない」と考える主婦には人気がないようである。家族向けアカウントをわざわざ別に作って使っているという事例があった。実際に使ってみると「おばあちゃんと実娘と孫」ではスムースに使えるが、たまの帰省で「よそ行きの顔を見せたい」嫁姑と孫ではとてもギクシャクする。姑が嫁のパーソナルデバイスに「土足で踏み込む」ことになってしまうからである。

Googleのような外国人がこうしたナイーブな日本の家族関係に即した商品を作ることはできないわけで、このあたりにはまだまだ改良の余地はありそうだ。裏表が激しい日本の家族関係はとても複雑なのである。

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