接触確認アプリCOCOAの失敗に見る日本の病理

NHKがアンドロイド版のCOCOAの不具合が見つかった経緯について書いている。

接触確認アプリCOCOAが壮大なβテストになっていたことがわかる。不具合はわかっていたが誰も上に報告はせず最終的に「自分のところに連絡がこない」ことを悟った田村厚生労働大臣が謝罪した。田村厚生労働大臣はおそらく組織が機能していないことを思い知らされただろう。

問題はどこにあるのか。




COCOAで不具合が起きたのは9月の末だったそうだ。アプリのバージョンアップが原因だと考えられている。テストの予算を確保していなかったのが直接の理由だとされている。

だが、予算措置を組み直すことは十分可能だった。情報そのものは広く出回っていたからだ。11月にはインターネット上で指摘が出始め、技術者が独自にアプリを解析した結果「これは動かない」と指摘していたうえ、SNSでも当事者たちから「知らせがこなかった」という指摘が上がっていたという。

こうしたシグナルは厚生労働省が抱える独特のマインドセットのせいで忘れ去られてゆく。

2021年1月に入って国民民主党の玉木雄一郎議員が問題点について質問をした。厚生労働省は「ユーザーの使い方が悪いのでは?」という姿勢だったそうだ。iOSも大丈夫なのかという懸念の声が出始めたがこれも「問題ない」という姿勢だった。のちにiOSでも問題が見つかった。

厚生労働省には当事者意識がなく問題は全て人のせいだと考えていたことががわかる。責任を取りたくないから見て見ぬ振りをしているというより「そもそも自分の仕事だ」とは考えていないのかもしれない。

最終的にβテスターとなった田村厚生労働大臣が気が付くまで厚生労働省が問題に対処することはなかった。これは、陸軍司令部が当事者意識を持たず決して失敗を認めようとしなかったのに似ている。第二次世界大戦は天皇が止めるまで続いた。今回は田村厚生労働大臣が当事者となったところで止まった。これくらいで済んでよかった。不幸中の幸いだったのかもしれない。

同じようなことはおそらく各種給付金でも起きているのだろう。店は潰れかけているが適当な救済手段はなく申請も面倒である。だが、中枢部がこれに気がつくことはないだろう。決まった報酬がもらえる国会議員が生活に困窮することなどないからである。

意思決定者が当事者にならない限り失敗に気がつくことができないという構造が出来上がっている。「決して失敗を認めない」上に「誰も当事者意識を持たない」のが今の日本なのだということになるだろう。

皮肉なことにCOCOAの件が大騒ぎになることはなかった。誰も自分ごととは思っておらず、インストールしていた人も「やっぱり国の作るアプリはダメなんだ」と思っていたのかもしれない。最初から期待してないから誰も怒らない。医療従事者を除いて全てが「これは他人事だ」と思っている。

ではNHKの記事は何が問題だと考えているのだろう。まず問題視されているのは業者選定のまずさである。もともとはHER-SYSを開発するベンダーに発注されたそうで「彼らがアプリ開発に慣れていなかった」といっている。つまり業者が悪いと言っている。

次にGoogleやAppleの仕様(つまりOSのことだろう)が頻繁に変わるという不平も述べられている。アプリ開発業者なら普通に対応していることであるが、それができないという。ここではスマホのOS製造者が悪いと言っている。

さらに自民党側平将明議員は「厚生労働省にはITに強い人がいない」といっている。平さんは「デジタル庁を作るから大丈夫だ」といっている。

要するに全て他人のせいである。誰も当事者意識を持たない。逆に現場が「変に頑張って」当事者意識を持っても褒めてもらえない。であれば他人事にして逃げたほうがいい。

おそらくこれが最大の問題点である。国全体が、頑張った人でなく失敗しなかった人が評価される大企業病に陥っている。

NHKも「問題を告発しても仕方ない」と思っているのだろう。政府関係者に鋭い質問をするキャスターはどうやら更迭されるらしい。だったら政府の言い分を垂れ流すだけにしたほうがいい。「NHKにクレームを入れた」と噂の広報官は東北新社から7万円の接待を受けていたそうだ。理不尽だが怒っても仕方ない。「ただ眺めていよう」と考えても当然であろう。

今回のCOCOAの話を見ていると「問題を指摘しても仕方がない」と考える人が増えても当然だと思える。

ただ、GitHubに集まるエンジニアがコードを覗いて「いやあこれは動かないよね」と知っていたと言うのは衝撃的だ。専門知識がある人はCOCOAが不良品だと知っていて話もしていた。だが、誰も問題解決に向けて動こうとはしなかった。

動くと損をする社会だと言う認識ができあがってしまっているのだ。

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