高齢化に殺されたDynabook

最近Dynabookの購入を手伝った。かなり暗い気持ちになった。時代についてゆけていない企業とがどのように作られるのかがよくわかったからである。




Dynabookはかつて「東芝」として知られていた会社だ。Sharp傘下に入っているがそのSharpは台湾の会社に買われたので要するに台湾資本の会社になっている。サービスは東芝コンシューママーケティングが担当しているという。親会社の東芝ライフスタイルは中国の美的集団の傘下に入ったそうでつまり中国の会社になった。製品もサービスももう日本の会社ではない。

2013年から使っていたDynabookの調子が悪いと言う。実際に触って見ると起動に時間がかかり起動してからも反応がないことが多い。

スペックを見ると第三世代Ivy BrigdeのCeleronだ。確かに古い。しかしメモリは8GB積んでいる。Macであれば利用用途によってはまだまだ使えるくらいのスペックだ。新しく買ったものは第10世代のCoffee LakeのCeleronである。世代は上がったがクロック数はそれほど上がっていない。「新しいものを買っても使い物にならないのではないか」と思った。

安心サポートと呼ばれるところに聞いてみたのだがなんだか様子がおかしい。東芝はWindows8.1からWindows 10へのアップグレードを推奨していたはずなのだが今ではWindows 10へのクリーンインストールは推奨していないという。Windows 8.1に戻す手伝いならするというのである。

サポートの女性は「確かにアップグレードの当時はWindows 10への移行を推奨していたが進歩が想定外だったため対応できなくなってしまったと説明する。ユーザーがクレームを入れてきたらどうするのかと聞くと「Windows10の最新版を入れてくださいと言います」と言った。機種が対応できずサポートもできないのにそんな無責任なことを言うのですか?と聞くと「最新機種であれば大丈夫です」と話をすり替えてきた。

もうどうしていいかわからないのだろう。

こうしたことはAppleのコンピュータでは起こらない。OSに不具合があればシステムについているバックアップから復旧することができるしOSそのものもいつでも入手ができる。このためユーザーは安心してまっさらの状態に戻すことができるし、中古を買っても最新かそれなりのOSに再整備が可能だ。MacでもiPhoneでも同じことが言える。iPhoneのリセールバリューが高いのはそのためである。

その当たり前のことがDynabookではできないのだ。

東芝はハードメーカーなのでOSをコントロールできなかった。結局ハードを買い換えてもらうことで対応してもらうしかない。一方でマイクロソフトは御構い無しに「Windows10」をどんどんと新しくしてゆく。おそらく昔のWindows 10と今のWindows 10は別物と言って良い。このため「やっとWindows10にあげられた」くらいのハードウェアが使い物にならなくなり、ハードウェアメーカーにクレームがゆくのである。

Appleは古いパソコンに無理やり最新のOSを入れることはない。だからサポートの人たちもハードに合わせた対応ができる。ただ古いハードウェアのサポートは段階的に打ち切られてゆく。まず最新のOSに対応しなくなり、アップデートがアナウンスなく打ち切られ、最終的に部品の供給が止まる。計画的に買い替えを推進するのである。

Dynabookは構造的にはハードディスクが換装できるのだがDybabook株式会社はこれをサポート対象外だとしているそうだ。SSD交換サービスがあるが40,000円程度のお金がかかる。おそらくこのユーザーレベルではHDDの換装などはさせられないのだろう。だが技術スタッフにやらせると高額になってしまう。結果的にシステムがダメになったらハードごと変えてくださいという絶望的なお願いをするしかなくなってしまう。

今回買い替えを手伝っていて思ったのだが、高齢になるともはやパソコンの切り替えができない。インターネットアカウントがどうしたとかソフトの入れ替えがどうだという話が出てきて手に負えなくなってしまうようだ。

一応「引越しソフト」と言うものがついているのだが、新旧端末のネットワークを自動的に合わせられないので、同一ネットワークに置いてUSBメモリで端末情報を移動させるという手段を使って移行する。古い端末に新しい端末の情報を与えて双方で同期を取ることでシンクロさせる仕組みになっている。Appleはクラウドのアカウントを登録すれば自動で全て引き継いでくれるし、バックアップから復旧する手段もある。Appleはハードもソフトもサポートするのでこの辺りのメンテナンス性の重要性を心得ているのだろう。

これだけをみるとDynabookはかわいそうだなと思える。悪いのはマイクロソフトだからである。だがそれだけではないんだろうなと思った。ユーザーに高齢者が多いと「ちょっとググればいい」ようなことも電話サポートに聞いてくるのだろう。コールセンタースタッフは技術的に簡単なことばかり聞かれるため難しいことがわからなくなっているようだ。

新しいハードにメモリを増設するために規格名を聞いたのだが、増設メモリ4GB DDR4-2133-2400という規格名を教えてくれた。これが47,000円するという。アマゾンで8GBを2つ買うとだいたい10,000円くらいで買えるので47,000円の法外さがわかる。ちなみにアマゾンではDDR4-2133かDDR4-2400と特定して探す。この数字は速度を表しているので特定しないと使えない場合があるからである。

だがサポートスタッフはおそらくそんな「高度な」質問は受けないのだろう。このメモリの規格名の意味はわからなかった。

かなり悪い循環が働いている。技術革新についてゆけなくなった会社に高齢の消費者だけが残る。多少お金は払ってくれるが技術的なことがわからない人たちである。すると「使えない」商品に対するクレームでコールセンターがパンパンになりググればわかる程度の質問を延々とぶつけられる。コールセンターには技術が蓄積されず、収益も挙げられず、単に疲弊する。

Appleのサポートに慣れているのでDynabookのサポートと話してみて「かわいそうだなあ」と思った。Appleは全体でサポートする体制になっていて「最後まで責任を持ちますから」と電話で宣言する。それができるのは、ある程度技術に慣れていて仕事に応じてハードを適切に買い換えられるユーザーがいるからだ。これが全体的にサポートスタッフを育てている。

だがDynabookのサポートは収益をあげられない客を担当しコストセンターだとみなされて日本の親会社から見捨てられた。つまりお客ごと厄介なお荷物扱いされている。おそらくあとは切り捨てが進むことになるのだろう。携帯電話会社もこれに気がついたようで、ahamo, povoという代理店に依存しないシステムにお客を移そうとしている。

DoCoMoはスマホ講座のようなものをやっているが、おそらくここにも陳腐化したユーザーだけが取り残されることになるだろう。携帯電話キャリアはこの辺りのサービスを有料化してゆくようだ。それでも使いたいと言う人だけが残る。

かつて日本の誇りだった東芝Dynabookは「高齢化によって殺されたんだな」と思った。おそらく同じことが携帯電話キャリアにもいえる。

前回のエントリーでは、戦後の全体主義的な産業構造が壊れてゆく様をみた。これだけをみるととシステムが悪いとか政治が悪いと言うような気になるが、実際には消費者の高齢化が背景にある。高齢者が多い老いた社会なので新しい価値観が受け入れられなくなっているのである。

日本全体が老いているのだ。

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