アメリカでスポーツに政治が持ち込まれた

アメリカ合衆国のオリンピックの予選に政治的な抗議運動を持ち込んでいいことになったそうだ。「戦争」につながるだろうなと思った。我々は新しい戦前を生きている。飛躍しすぎだろうか?




まずニュースから確認する。アメリカのオリンピック予選で「人権擁護」のジェスチャーなどが認められるようになった。ただし引き続きヘイト発言は認められないしオリンピック本選でも認められないという。

だが記事を読んでゆくと少なくとも本番で認められないのは「アメリカに管轄権がないから」に過ぎない。つまり単に権限がないということを言っているに過ぎない。また、何が許容されるかについての事例を挙げているが「政治的発言」に人間が白黒の色をつけているだけだ。あるものは講義と認定されあるものはヘイトスピーチになる。

白黒つかない例はいくらでもある。例えば中国の人権侵害がそれにあたる。先進国から見れば虐殺なのだが、中国のマジョリティである漢族から見れば安全確保である。ウイグル族の虐殺も元々は習近平国家主席が襲われかけたことが原因になっているという話があるそうである。日経新聞によると50名の死傷者が出たそうだ。視察のニュースが放送される時間を狙ってメンツを潰すためにやったのだろうと言われている。TBSはウイグル人の団体の言い分を昼のワイドショーで伝えているが彼らは中国では分離派とみなされている。

新疆は中国の国内植民地だが内地化が進んでいる。それに反対し多人々の一部が過激化した。だが中央政府は誰が敵か味方かがわからないのでウイグルからイスラム要素を取り除こうとしている。そして犠牲になるのは一般市民だ。特に子供の方が教育しやすいので親子が引き離されるということになっているそうである。国家指導者を殺そうとするのはよくないし、政府が国民を巻き添えにしてテロ対策を優先するのもよくない。「どっちもどっち」だが、きれいに白黒がつくような問題では実はない。さらにその状況を利用して内政の分断を外に向けるための道具に使うのもあまり褒められた行為ではない。

アメリカの国内でも、トランプ支持はヘイトではなく愛国だと思っている人は大勢いるだろう。トランプ大統領の幕引きがあまりにもひどいものだったために揺り戻しとして人権派が持ち上げられているだけである。

おそらく背景にあるのは新型コロナ禍の苛立ちだろうが、実際の原因になっているのは経済格差だろう。新型コロナ禍は単なるきっかけに過ぎないともいえる。バイデン 大統領は格差を埋めるために大型の予算を提案している。一世代に一度のという思い切った措置だそうだ。ただ、法人税や海外資産から得られた利益への課税が提案されているため予算が通る確かな見通しは立っていないそうだ。

目を別のところに転じる。オーストラリアの政治状況が怪しい。オーストラリアは経済的に停滞しないと言われていたのだが徐々に雲行きが怪しくなった。そこに入ってきたのが中国である。だがターンブル政権の頃から中国がらみの汚職事件などが起こった。結局内紛が起き親中派から反中国の国になった。だがそれでも政権は安定せず、最近もスキャンダルで大臣の交代が起きている。

国内で対立が起きた時手っ取り早く解決するためには外に目を向ければいい。かつてはそれがスポーツだった。人間は集団で争いたいという気持ちを持っている。これをショーとして形式化したのがオリンピックである。

これではすまなくなっている。まずは手近な人権問題への抗議が許容されたのだが、これが外向きの出口を見つけることになる。アングロサクソン圏では中国がその標的になっている。

アメリカ・オリンピック・コミッティの決断は「もう国内で政治的なアピールを抑制できないところまできている」ということを意味しているのだろう。オリンピックだけではなくサッカーにも波及している。選手がデモを支持するジェスチャーで試合から追い出されたそうだ。わかりにくい政治的課題が多い中「自国民に銃を突きつける軍」を支持する人は誰もいないので、おそらく多くの人がこのミャンマー選手に同情するだろう。だが、おそらく一旦スポーツに政治を介入させれば、それはどんどん拡大してゆくことになるだろう。

新型コロナウイルスや経済格差と言った問題には明確な答えがない。そんな中「人権を守る」というのはとてもわかりやすいメッセージである。誰も反対はできない。こうして我々はわかりやすさに惹きつけられてゆく。

  • 1914-1918:ヨーロッパの均衡が崩れて第一次世界大戦が起きた。
  • 戦後経済が回復し賃金が上がり始める。これによって借金がしやすくなり大量の資金が下部に流れ込んだ。
  • 1929-:バブルが崩壊して世界大恐慌が起こる。
  • 1933年 – ヒトラーが首相に指名される。ライヒバンクに国債を引き受けさせて格差縮小の公共事業などが推進されるが、実際の目的は軍備の増強だった。
  • 1939年:やがて第二次世界大戦が起こる。

第一次世界大戦から大事に世界大戦までの動きを見ると最初から軍事行動が組み込まれていたことがわかる。つまり、今回の動きがエスカレートしたからといって相が変わって突然戦争になるというようなことはなさそうだ。

現在はどちらかといえば宣伝戦という要素が強い。おそらくオリンピックのような舞台は最初からお誂え向きの舞台だったわけである。今回出口がどこになるのかわからないが、おそらく複雑化して人が手に負えなくなるところまで拡大するのではないかと思う。

少なくとも、IOCはアメリカのテレビ局を取るか国家的スポンサーである中国を取るかという二者択一を迫られるようなこといなるのではないかと思った。もはや同時に二つを相手にすることは許されなくなるように思えるし、世界が一つのスポーツ祝典を祝うというようなことは難しくなるのかもしれない。

韓国が2032年の南北開催を目指して提案書を出したそうだ。すでに有力都市がありさらに北側とも調整していないそうである。いっけん「融和」を目指す動きなのだが、実はこれも政治利用なのだろう。こうしてどんどんスポーツに政治が侵食している。

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