なぜか派閥の領袖が集中する中国地方と中選挙区的状況の復活

消えた4億円が話題の香川敬さんのことを調べようと思った。河村建夫元官房長官との関係が知りたかったからだ。まず、河村さんの置かれている状況が知りたいと思った。河村さんは二階派の重鎮である。そこで他にどんな派閥構成になっているのかということを整理しようと思い立った。

調べていて面白いことに気がついた。周りに派閥の領袖・幹部クラスの選挙区がやたらに多いのである。西日本の人はやたらまとまって派閥を作りたがるのだなと感じた。比較的「個人で動きたい」と考える関東人と全く違った資質をもっているようだ。




西から順番に安倍晋三(山口4区・細田派)河村建夫(山口3区・二階派)岸田文雄(広島1区・岸田派)竹下亘(竹下派・島根2区)細田博之(島根1区・細田派)石破茂(鳥取1区・石破派)がいる。安倍晋三元総理は総理大臣になり派閥の代表を離れた。また河村建夫元官房長官は党務に忙しい二階幹事長に代わって二階派を取り仕切っていると言われる。

このほか高村正彦元副総裁の息子が山口2区にいて橋本龍太郎総理大臣の息子が岡山4区にいる。中国地方は保守王国で長く同じ人を議員に送り出す傾向が強いのだろう。このため地盤が安定しやすく派閥の領袖が出やすいのかもしれない。

ところがこの安定した保守王国が崩れつつある。山口県の公安委員長を経験し全日本私立幼稚園連合会の会長をしていた僧侶の香川敬さんに「4億円を詐取した」容疑がかかっている。どうやら本人が直接関わっていたのではないかという証言も出てきた。だが、そのお金がどこに流れたのかはわからない。全日本私立幼稚園PTA連合会長を務める河村建夫元官房長官との関係も噂されているそうだがもちろん当人たちはそれを全否定している。

おそらく、この問題は議員辞職するかしないかといういつもの方向に進んでゆくと思うのだが、それよりも構造的な問題の方が気になる。

河村建夫元官房長官は地元萩市長選挙で自身の弟を当選させた。戦った相手は「領地・山口3区」を狙っている林芳正参議院議員だ。林芳正参議院議員の父親の林義郎の地元は下関だったのだが安倍晋三元総理に選挙区を譲った。参議院議員のままでは箔がつかず総理大臣を狙えないので衆議院小選挙区が欲しい。ところが小選挙区の任命権を握っているのは二階幹事長である。追い落とそうとしている河村建夫元官房長官は二階派なので形勢はあまりよくない。だが、林さんも地元に根付いていて人気は高いはずだ。

おそらく選挙区を維持するためにはもっとお金が必要なはずである。だから「4億円はどこに行った」となってしまう。

同じようなことは広島でも起きている。ここも二階さんの影響が浸透していたところである。自身は安倍総理の側近として知られているそうだが、河井克行元法務大臣は党本部から渡された1.5億円の使途を「党勢拡大に全て使った」と言い切っている。そして議員歳費から捻出したポケットマネーから「仲間が欲しかったから」という理由で地元議員を買収して回ったと主張する。本人は満足なのかもしれないが第三者は「党本部からもらった金」が回ったと考える。ちなみに河合杏里さんと戦った溝手顕正さんは岸田派だった。つまり安倍派対岸田派の戦いだが裏で支えたのは二階幹事長である可能性が高い。

中国地方は、細田派・竹下派・岸田派が根付いている。彼らは自分たちが覇権を握りたいと思っているのかもしれないが、現状はそれなりに均衡が取れている。この均衡を利用して党の実務を握る二階幹事長から「支援(つまりゲンナマのことだ)」が入るという形である。

ゲンナマを武器に置き換え中国地方を独立王国だと見ると外から入ってくる二階派は外国の介入勢力ということになる。介入の仕方は様々だが、実は内戦の構図なのだ。

中国地方の他に目立った派閥領袖の集中地域があるのが関東地方である。北関東に渡辺美智雄がおり渡辺喜美があとを引き継いだ。渡辺は「みんなの党」を作って外に出たことで支持を失った。千葉県では国民民主党系の議員などが一時渡辺喜美と行動を共にしていた。自民党の中には入れないが共産党とも組みたくないという人たちである。彼らは今度は菅総理のもとに結集しつつある。関東は派閥の空白地帯なのだがやはりそれでは戦えないので急速に派閥化が進行しつつあると言えるのかもしれない。この他甘利明(甘利明グループから麻生派)石原伸晃(石原派)がある。緩やかで目立たない集団だ。

関東人には集団を組む文化がなく派閥や政党などの組織よりも一人ひとりの考え方の方が重要視される。これは今回の千葉県知事選挙でも見られた。党の意向よりも熊谷俊人新県知事を選んだ人が多かった。

自民党は純粋な地方型ではなく地方でも都市でもないところで安定していることがわかる。現在典型的なのが中国地方と東京を取り囲む関東なのだろう。ただ、関東地方は「派閥」という旧来型の名前を嫌い勉強会やグループなどと言いたがるが中国地方の派閥は昔ながらの集団的な「派閥」を形成している。

二階派は正式名称を志帥会というそうだ。派閥分裂で少数派になってしまった山崎拓・亀井静香のグループの「寄せ集め」同士が合併した派閥なのだそうだ。長く派閥内がまとまらないままだったが2012年に伊吹文明が派閥を離脱したあとを継いだ二階俊博現幹事長が派閥をまとめはじめたことで次世代型の派閥になった。

「次世代型」というと聞こえはいいが、主義主張も能力もどうでもいいという人たちである。単に数を集めれば党の金を自由に差配できる。金と利権があれば人はなびく。これが二階イズムであろう。

二階代表は郵政問題で離脱した人を復党させたり民主党経験者を仲間に引き入れたりとなりふり構わない党勢拡大を始めるようになる。資質に疑問がある議員をとにかく大臣にとねじ込んだりしたために「失言した大臣の派閥を調べると大抵二階派」という印象もある。それでも数が多いという理由で菅政権誕生の立役者になった。

中国地方は細田派・竹下派・岸田派・石破派が同数づつ選挙区を分け合うという均衡型になっている。誰かが総理大臣になれば均衡が崩れる。その意味では菅総理は推薦しやすかったはずである。つまり集団はお互いに均衡してしまい大きなグループが作れない。

だが個人主義の傾向が強い立憲民主党や関東の自民党も大きなまとまりは作れない。結局、生き残るのは「とにかく多数派を形成して数を握れは金がついてくる」という人たちである。

この結果として「物を言うのは金」という中選挙区時代の構図が小選挙区になっても復活しつつあるということになる。党が実権を握れば中選挙区の金のかかる政治はなくなるはずだったのだが、結局あの時代に戻りつつあるようだ。自民党というのは旧世代型の政治組織でありおそらく自己脱却は難しいものと思われる。そこで確かな野党が求められるわけだがこの国にはまだそういう政党は生まれていないようだ。

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