岸防衛大臣の赤っ恥の根幹にある意外と深い理由

防衛省のワクチン予約システムがフロントエンドで入力ミスのチェックをしていないと話題になった。これについて岸防衛大臣が抗議をしたことで騒ぎが大きくなった。今回はこれについて見てゆくのだが、以外と根深い問題がある。




まず問題を整理する。防衛省がワクチンの接種会場を作った。予約が殺到して電話画繋がらないという前評判があったために「予約処理がスムーズに見えるようにシステムを作れ」というお達しがあったのだろう。そのあたりは万全に備えたようだ。

だが今度は入力チェックをしなかった。AERA.dotは事前取材したのだが答えてもらえなかったために自分たちでチェックをして「デタラメな入力でも予約が通ってしまいますよ」という記事を書いた。

すると岸大臣から的外れな反論が入った。このような手法を周知されては悪意のある人が予約を入れてくるだろうというわけである。ここから話がどんどん複雑化してゆく。議論のための議論が始まったのだ。

安倍晋三元総理大臣が参戦したこともあり一瞬アベトモ界隈が活気付いた。またジャーナリスト側も「政府の問題点を伝えるのがジャーナリスムの使命である」というような議論が出て来た。どちらもなんとなくものすごく高次元で高尚なことを言っているように思える。

だがシステムを一度でも作ったことある人なら「普通妥当性のチェックはするよな」と思うはずだ。他のシステムとつながなくても市町村コードのテーブルくらいは準備できるだろう。誕生日の年齢チェックも「単なるエラー処理」として入れたほうがいい。この中で唯一高度なのが「チェックサム」を仕込んでいなかった予約番号体系だろう、これは最初から仕込んで置くべきだった。

 AERAdot.編集部で東京の予約サイトで試してみると、6桁の市区町村コードには「654321」、10桁の接種券番号には「9876543210」と適当に番号を入力。生年月日も「1956年1月1日」と適当に入力したところ、そのまま進めて、5月29日8時から予約が取れてしまった。

【独自】「誰でも何度でも予約可能」ワクチン大規模接種東京センターの予約システムに重大欠陥〈dot.〉

おそらく混乱の原因はこれが朝日新聞系の媒体であったというところと、竹中平蔵氏の名前が入っているという点だと思う。最初から批判目当てだったことはわかる。だがそれでも対応していれば未然に恥ずかしいレベルのミスは修正できたはずである。

この辺りの仕分けが防衛省にもできていない。またおぞらくジャーナリズムの側もよくわかっていないのではないかと思う。

だから「こんなの誰でも気がつくでしょ」という問題があたかもサイバーテロの専門家でないと気がつかない重大な秘密のような書かれ方をしている。

AERA.dotが取材を申し込んだ時に防衛省の広報にこのことがわかる人がいなかったのだということは想像できる。おそらく自信がなかったのではないか。結果的に取材を蹴ってしまったので反論するチャンスを失ってしまった。のちに岸防衛大臣が「自治体のシステムとつながっていないから予約の重複が判定できない」と言っている。この程度の説明は取材時にしてもよかったのだがAERA,dotはだって取材に応じてくれなかったじゃあないですかと反論している。おそらく大臣は「取材の申し込みをスルーしていた」という説明は受けていなかったに違いない。だからTwitterで堂々と反論して簡単に返り討ちにあってしまったのである。

また、これについてQuoraで当ててみるとマスコミへの敵意というものが相当広がっているようだ。おそらく日本が発展しない原因を「反対ばかりしているマスコミ」に見出しているのだろうが背景にはマスコミが何を言っているのかよくわからないがとにかく偉そうだという憎悪があるようだ。読解力不足の人たちが逆恨みをするという状態が日本には蔓延している。

だが、まごついている人たちを観察し続けていても問題解決の糸口は全く見えてこない。できない子に考えさせても無駄なのである。問題は全く別のところにある。

今回の騒ぎでわかったのは日本人の知識層という人たちが軒並み極めて低いレベルのIT知識しか持っていないという点だった。誕生日の妥当性チェックというプログラミングのいろはを知らない人が多いという意味では「ITリテラシー」とさえいえない。大臣官房に日曜プログラミングくらいやったことがある人がいればこんな問題は起きていなかったはずなのだ。

アメリカでマネージャーになるような人はどこかでMBAなどのコースを受講する。だいたい統計から始まり経済学や会計の勉強をするのだがその中にマーケティングやITなどの基本的なコースが入っているのが一般的である。おそらくこうした勉強は留学生が多い台湾や韓国などのアジア諸国でも一般的になっているはずである。

日本人は会社や官公庁に入ってしまうとこうしたマネージメント教育から閉ざされてしまう。おそらくジャーナリストと言われる人たちもマネージメント教育を受けないままなのだろう。

つまり日本の教育は「専門馬鹿」を大量に効率よく作り出している。お互いに専門外の人たちと話しができない人たちが政策や議論を主導しているため、もはやこの程度の複雑さにも耐えられないのだ。

正解がわからなくなった時の日本人の対応も決まっている。マスコミが悪い、騒ぎを大きくする。野党が悪い、安倍晋三元総理大臣が悪い、岸防衛大臣をやめろ……と議論が明後日の方向に進んでゆくのである。何が正解かわからないので誰かを悪者にして議論を「解決」したがるのだ。

おそらくこの問題はデジタル庁を作れば解決するということになるのだろう。新しい組織を作れば作るほどその全てを把握できる人がいなくなるというバベルの悪循環が生まれる。最終的に「総理大臣は森羅万象を担当しているからいちいち個別のことまで把握していない」などと平気で言い出す総理大臣が生まれてしまうのである。

彼らがバベル症候群に気がつくのは一体何万年先になるのだろう。それよりも一人ひとりが周辺知識に興味を持ち少しづつ勉強し始めたほうがずっと簡単に問題解決につながると思うのだが……

Google Recommendation Advertisement