ヘンリー王子はアメリカで新しい仕事を見つけたようだ

BBCの1995年の報道が問題になっている。ウイリアム王子は調査委員会の報告書を受けてBBCの報道姿勢を批判した。ウイリアム王子は王位継承予定者なので、日本で例えていうと皇太子や秋篠宮がNHKを批判するようなものである。王族にも発言の自由があるんだなと感心した。ただそれが言えるようになるまでに25年もかかっている。




BBCの会長はこの報告書を真剣に受け止めているようだ。AFPはこれをうけてイギリス政府がBBCの改革を検討していると書いている。だが記事に実際書かれているのは「改革を望む」という控えめな文言だけである。ボリス・ジョンソン首相は過去にタイムズ紙から解雇されていると付け加えているが、これは「お前が言うな」というほのめかしなのだろう。

独立調査が完了するまでの間に25年がかかったわけだが、当初の関係者たちはこの事件を隠蔽しようとして来たらしい。おそらく組織的隠蔽者たちがBBCを退くまでの間まともな調査が行えなかったのだろう。バシール記者は当事者として非難の矢面に立たされることになり過去に受賞した賞を返還する意向だそうだ。

だがバシール記者が賞を返還してもバラバラになった家族は戻ってこない。このインタビューでイギリス王室と元ダイアナ妃の間には決定的な亀裂が入った。結果的に二人の王子は母親を失うことになった。ヘンリー王子の受けたトラウマはかなりのものだったようで10年間パニック発作を抱えて投薬治療も受けていたようである。陸軍にいた時代を除いて平穏な日々はなく最終的に公務から離脱した。アメリカで平穏な暮らしを送れるようになったのと引き換えに軍隊での名誉称号を失い公式の場で軍服を着ることもできなくなったそうである。

日本だとどんな経緯を辿るのだろうかと思った。NHKが例えば敬宮愛子内親王殿下に独占インタビューを試みることなどありそうにない。予算を握られている上に国民の感情がそれを許さないだろう。つまり国民感情に守られているようにも思える。

ただ日本の状況もかなりひどい。

コロナで安倍総理が政権を放り出す前、敬宮愛子内親王殿下に旧皇族から婿を取らせるという案が公然と語られているそうだ。愛子内親王のお子様が天皇になると女系ということになってしまう。これを許しがたいという人たちがいる。一方で、平民になった旧皇族(中にはかなり遠縁の人たちもいる)が後続復帰するのも面白くない。だからその中から婿を一人とって継がせようという御都合主義の考え方である。

自分たちの主張さえ通れば他人がどうなろうと構わないという人たちがこの国の政治を動かしている。そして皇族も彼らにとってはその対象なのである。おそらく自分たちが国を動かしているという万能感を得るために格好の課題だくらいにしか思っていないのではないだろうか。

皇族方は将来天皇にならなくても一億総小姑と言って良い状況に置かれている。税金で暮らしているというだけで他人のプライバシーに踏み込んでいいと感じる人が大勢いるわけである。

現在小室圭さんがバッシングされている。赤坂御用地に住むかもしれない、降嫁の持参金で儲けるかもしれないといった嫉妬心がおおっぴらに語られるが、それを見咎める人は多くない。

小室さんの問題がどう解決するかはわからないがもう皇室からの女性をお嫁さんにしようなどという人はいないだろう。国民の機嫌を損ねれば第二の小室さんになりかねない。日本にいては一生国民のおもちゃにされる。向学心がありアメリカで弁護士資格を取るというのは良い選択なのではないかと思う。

皇室の女性たちは将来も決められないし結婚する人を自分では自由に選べない。法律がそうなっているからというより国民から監視されているからである。この状況に対して当事者たちは批判ができない。憲法で政治的なことを言えないのは仕方ないにしても自分たちがどうなるかについて希望も言ってはいけないという決まりではないのだがやはりそれは難しいだろう。

イギリスと日本のどちらが幸せなんだろうかと考えたのだが、どちらも幸運とは言えない気がする。ただ救いもある。

ヘンリー王子はアメリカで新しい仕事を見つけたようだ。それは他人の痛みを共有するという仕事である。アメリカは自由の国でなんでもおおっぴらにするという印象があるが必ずしもそうではない。最近、歌手のレディー・ガガさんが過去の壮絶なレイプ体験を具体的に語った。いくらassertive communicationの国とはいえいえないこともある。

ヘンリー王子はオプラ・ウィンフリーさんと組んで聞き手の側に回ることにしたようだ。話しにくいことを社会で共有して痛みを和らげてゆこうという取り組みである。競争に夢中になり他人の痛みに鈍感な「自己責任の国」に足りないのは、おそらく聞き手と共有する努力なんだろうなと思う。おそらく日本の皇族もアメリカに逃れたほうが幸せに暮らせるだろう。

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