日本が中国に引き離されるわけを物流から考える

古いMacBookをジャンクで買ってきた。中を開いて遊び、あわよくばYouTubeビデオでも作ろうという魂胆だった。昔は秋葉原に行けば色々な部品が揃ったのだが今ではそんなことはできなくなっている。代わりに中国の通販サイトAliExpressにたくさんの部品が揃っていた。純正品とは思えないのでわざわざ真似したものを作っているのではないか。秋葉原は日本の電子製造業の層の厚さを示す象徴的存在だったのだがその地位はとうの昔に中国に奪われたのだ。




A1181と呼ばれるこのMacBookは2006年から2009年までの4年間製造されていた。ポリカーボネート(プラスチック)でできている。YouTubeで見ると英語圏やインドなどの中進国で修理動画が出ている。Appleではサポートしていないし日本ではあまり目を向けられることはないが手軽な値段で買えるのでおそらく現役機として重宝している国もあるのではないかと思う。

当時のMacBookは作りが簡単なのでガレージ遊びができる。車で例えると構造が単純なフォルクスワーゲンビートルみたいなものである。つまり修理を通して基本的な技術を底上げできるというような存在でもあるのだ。

AliExpressの日本語はほぼ機械翻訳でUIも怪しさ満点である。なんとなく日本人から見るとバラック小屋の部品屋さんで怪しげな部品を探しているような感覚になる。必要だった部品はキーボードのケーブルだ。汎用品ではなく特殊なものが使われている。中国はこれを作っているのである。

当初「AliExpressは空気が送られて来ることもある」とか「品物がいつ来るかわからない」ということを聞いていたので、まあ手に入らなくても仕方ないやという感じで頼んで見ることにした。意外としっかりしていた。

5月26日に発送され、深圳市の配送センターに行き、輸出封入され、広州国際郵便処理センターに届けられ航空会社に受け取られるところまで時間単位で記録がついている。飛行機が中国を出たのが5月28日である。

日本についたのが5月30日なのだが一度川崎市で受け取って海外通関に送られる。そこで審査されている。6月3日に配送手配された。おそらくこれを受け取ったのは日本郵政だと思う。だがここで追跡が途切れる。日本側が対応していないのである。結局6月3日に到着し、6月5日になってから「到着しましたよ」と情報更新された。つまり日本では時間単位どころか日にち単位のトラッキングさえできない。

中国のトラッキングと日本とが連携していないだけでは?とも思ったのだが、日本郵政のシステムはかなり脆弱である。佐川急便やヤマト運輸などはそれなりのシステムがありこまめに見ていると途中で行き先を変えて別の場所(職場、営業所、コンビニエンスストア)などで受け取ることができるが、日本郵政はそれすらできない。

おそらく、日本郵政は荷物のトラッキングを人力で処理しているのではないかと思われる。下手をしたら人力で入力してるのではないかと思う。手間がかかる上に情報も不正確になる。途中で差し止めて局留めに変えるということもできず配達できなかったものの再配達ができるのみである。つまりサービスレベルも劣る。

おそらく中国(といっても広州市・深圳市・東莞市などの一帯)は元々こうしたトラッキングシステムを備えた物流網が作られたのだろう。後発国の強みだ。今あるものを改革するより最初から新しく作った方が簡単である。結果的に安くて効率的な物流インフラが作られるので競争優位になる。

中国国内でも宅配便の取扱量が増えているそうだ。中国系のメディアが報じAFP経由で配信されている。世界中の部品を必要としている人は秋葉原のラヂオセンターを回るよりも検索して一発で部材が探せる上に安い中国に部材を発注した方が早いということになる。

もちろん日本郵政も手を拱(こまね)いているわけではない。楽天と組んでシステム改革をやるようだ。楽天と日本郵政が共同して物流センターを作ったりするようである。ただし「なぜ国がきちんと手当てをしないのだろう」という気がする。携帯電話の料金改革にしてもそうだが継続的な支援がない。

日本郵政はユニバーサルサービスの維持のため、政府からある程度の負担を負わされている。物流は国の産業競争力の維持には極めて重要だが国は「郵便・物流など維持されて当たり前」と考えて支援はしてくれない。結果的にハンデばかりを負わされて競争力を失ってゆくのである。さらに民営化も不完全な状態で国に指図はされるが支援はしてもらえないという状態に置かれている。地方の活性化を遅らせているのはおそらく優先順位もつけられなければ物事を決めることもできないという日本政府の不作為である。

細かいことは抜きにして、実際に自分でやって見るまで中国の物流はこんなに進んでいると思わなかった。中国は遅れた中進国だという漠然とした印象を元に現状認識すると思わぬ間違いを生むことになるんだろうなと強く感じた。

こうした情報を聞いて「よし日本も頑張らなければ」と思えるのかそれとも「いやそんなことはない」と情報を否認するのかで物事に対する印象は大いに変わるだろう。

ただ、中国は人権を無視する国だからやがて潰れるだろうというような観測は日本の成長の役には立たない。我々は認識を改めるべきだろう。

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