尾身茂会長が逃げた

尾身茂会長ら有志が提言を発表した。提言の内容をみたのだが「やはりオリンピックに観客をたくさん入れるのは危ないんじゃないかなあ」とだけ言っているようだ。それよりも気になったのが「中止も視野に入れて検討してくれ」という文言を書き加えなかったとわざわざ言った点である。逃げたんだなと思った。

提言しないならわざわざ言わなくても良さそうだ。おそらくオリンピックが失敗に終わった時「あの時提言しようと思っていたが菅総理が先にG7の席上で宣言してしまったから言っても仕方がないと思ったんですよね」というための布石を打っているのだろう。つまり当事者としては失敗する可能性が多分にあるということになる。

次に気になったのがマスコミに注文をつけている点だった。同じことを政府が言えば報道管制であり大騒ぎになっただろう。専門家は「今日もオリンピックは静かに粛々と日程をこなしています」と報道して欲しいのだろうが、そんなことになるはずはない。

おそらく専門家としては「いうことは言ったが誰も従わなかった」から私たちは悪くないということを言いたいだけなんだろうなという気がする。

尾身茂会長の提言を無視すると叩かれるので関係者たちは一様に「尊重します」とか「共有します」と言っている。そういいつつ何も聞かず自分たちのやりたいようにやるということだろう。

マスコミはとにかく安心したい。専門家が安全なオリンピックを保証してくれるならそれを報道するのだろうが、保証してくれないのだったら自分たちの代わりにオリンピックを拒否して欲しかったのだろう。結局は尾身会長たちはオリンピックに関する責任から逃げたのではないということがわかる。世間の過剰な期待から逃げたのだ。マスコミが過剰に期待するのは自分たちが矢面に立って「反政府的である」というラベルを貼られたくないからである。そしてその向こうには変化を拒む国民がいる。

時事通信の世論調査を見ると菅内閣の支持率は下げ止まったようだ。支持する理由は「他に適当な人がいないから」であり、支持政党なしが6割以上と最も多数派になっている。誰も政治には期待していないという状況になりつつある。かといって声はあげない。

そんな中Quoraを見ていたら、立憲民主党叩きに多くの高評価が集まっていた。政府は成果を上げられない。解決策は見つからない。他に適当な人もいない。大丈夫だと保証してくれる専門家もいないとなったとき、人は何に走るのだろうかと思ったのだが、弱者叩きに走るんだなと思った。

確かに立憲民主党には支持は集まっていない。成果も上げてこなかった。だから叩きやすいのだ。解決策を持っておらず不安に駆られた人が政権に対して憤ることはない。代わりに叩きやすいものを見つけて叩く。解決には全くならないがおそらくある種の安定は得られるんだろうと思う。まだ大丈夫、自分たちはちゃんとやれるという気分に浸れるのだろう。

そんな立憲民主党もなぜか共産党を叩き始めた。選挙区で票の食い合いを避けるために選挙協力はしたいが絶対に政権に入れてやらないと言っている。だが連合の会長はそれだけでは足りず消費税減税という左派的な政策もやめるべきだと言っている。公明党はおそらくほくそ笑んでいるだろう。選挙協力も「水と油の立憲民主党と共産党がなぜ選挙協力するのか」と選挙協力を阻止しようとしているようだ。潜在的な脅威ではあるのだろうがもう一押しすれば立憲民主党の勢力はさらにそがれるだろう。

行き詰まると弱いもの叩きが始まるんだなと思った。日本の有権者はおそらく自らを窮地に追い込んでいるのだ。

当初予想していたような専門家の暴走は起きなかった。結局彼らは過剰な責任から逃げたのである。あとは政府の判断だと言っているが実際に言いたかったのは「これが嫌なら政府を帰るべきですよ」ということなのかもしれない。彼らは国民が選んだ政府に諮問されているだけの存在である。民意に逆らうつもりはないが、恐らくこれは当然の判断であろう。