河野太郎大臣が作り出す「ワクチン供給量不安」

河野太郎行政改革担当大臣がテレビでワクチンについて説明していた。Twitterをブロックされているので悪い点だけを探して話を聞くようにしているのだが特にツッコミどころもなく面白くもなかった。だが結果的にこのテレビ出演は「ワクチンが足りないのではないか」という不安を醸成することになった。流石にお騒がせの才能があると思った。




河野大臣がTBSの番組で次のように説明した。

  • ワクチンの確保は終わっていて、あとは若年層などに広く接種してもらうためにはどうしたらいいかを考えている。
  • 接種券で整理しているのは数を把握するためである。職場での接種が始まっているので、その分を差し引いて自治体に分配する必要がある。だからこれは必要な措置だ。
  • 接種券の発行が遅れているのは接種券を一気に発行すると自治体の予約システムがパンクするからだ。

これはこれでお話が成り立っている。話が暗転するのはこの後である。この番組に出た後で「職場接種の申し込み」を停止したのだ。「モデルナのワクチンが足りないから職場接種の新規受付を中止する」という発言だったようだ。当然なぜ番組出演時に言わなかったのだろうとして番組で取り上げられていた。田崎史郎さんさえ「出演の時にいってくれれば」と困り顔である。できるだけ政権を応援したい田崎さんでさえ庇いきれないほどの見事な迷走ぶりであった。

実際に調べてみた。千葉市では65歳未満への受付が始まっている。余力があるところは開始してもいいということになったからだろう。ところが接種券の配布はまだ始まっていない。このため接種券を持たずに病院に予約をして「後で届ければいい」ということになっているようだ。つまり地方自治体はコールセンターによる予約も管理していないし接種券での整理もしていないのである。

一概に「病院」といっても高齢者をたくさん集めているところもあればそうでないところもある。またITについて取り組んでいるところもあれば電話で受付しているだけのところもある。高齢者に人気の「優しいお医者さん」では高齢者か持病のない人は「キャンセル待ちのリストに載る」と教えてもらった。一方で高齢者に人気のない病院は予約を受けてくれた。小学校が近くにありそれでも経営が成り立っているということなのかもしれない。一方でITにこだわり「現在受付システムを作っている」というところもある。状況はバラバラなので自分で予約して確かめるしかない。だからつい「複数予約して早いところで接種しよう」という気持ちになる。

千葉市はこの状況をどれくらい把握しているのだろうかと思った。千葉市が持っているリストはいまだに「誰でも予約を受け付ける病院=A」と「かかりつけの患者しか受け付けない=B」という区分になっていて更新されていない。そもそも各病院の状況など把握するつもりはないのだ。

こーうセンターでは「受け付けてもらえたんですよね、だったらよかったんじゃないですか?」と言われた。このブログでは過去数回「結果オーライ」について書いているのだが、ここでも「まあ結果が良ければもういいじゃないですか、こっちも大変なんですよ」というマインドセットが見受けられる。疲れて諦めている。

これが職場接種の過大見積もりにつながっているように思える。早い者勝ちなので「足りなくて責められるより余分に申請しておこう」という担当者が多かったのだろう。つまり漠然とした不安と自己責任社会が背景にある。担当者を責めた流のは筋違いである。ワクチンの過大請求はパニックの買いだめに似ている。

河野大臣はこの過大申請に基づいた数字を見て「接種はうまくゆきそうだ」とテレビで言っていたのだろう。だが申請が膨らむと今度は一転して「供給体制に不安がある」と言い出した。結局田村厚生労働大臣が出てきて菅総理が関係者を集める騒ぎになったようだ。最終的に「政府が数を精査しますよ」と発表せざるを得なくなった。菅内閣はいちいち全員を読んで会議を開かないと情報共有ができない状態に陥っているのである。

ただ、こうしたニュースを見るまでもなく「接種券の発行が間に合わなくても先に射っておいていいですよ」という指示が出ているわけだから混乱するのは当たり前とも言える。つまりテレビでの河野大臣の発言は虚偽ではないまでも単なる願望だったことになる。

一方で河野大臣の発言を聞いて出遅れる人もいるだろう。おそらく多くの65歳未満は「接種券が来るまで予約はできないのだ」と思い込んでいることだろう。実際には病院に張り紙で「予約を始めました」などと書かれているのだがこれは自分で情報を取りにゆかないと気がつけない。おそらく接種券がきた段階で予約が殺到することになる。特に予約番号を必須にしている公的な機関ではこれが顕著になるだろう。

河野大臣の説明は整合しているのだがこれは「霞ヶ関ランド」の中の話であって日本の状況を表してはいない。安倍政権になってよく見られる独特の倒錯したマインドセットだ。

最近「赤木ファイル」が発見された。佐川理財局長(当時)は国会の<正しい>説明にあわせて<事実>も変更されるべきだと指示したらしい。それ以上の理由は説明しなかったそうである。赤木俊夫さんはそれに反抗したが、最終的には「おかしいのは自分のほうだった」と精神を病み亡くなってしまっている。1984年というディストピア小説(宝島社から漫画版が出ているそうなので興味がある人は読んでみるといい)そのものの世界である。1984年では空想上の狂気として描かれていたが実際に現実になると狂っているとは思えなくなる。ただ当事者はかなり混乱したのではないかと思う。

ファイザーのワクチンについては7月に供給が先細ることがわかっているそうだ。大手新聞社は伝えず日刊ゲンダイがファイザー製ワクチン突然の大幅供給減に自治体大混乱! 接種加速のはずが急ブレーキという記事を出した。厚生労働省ではワクチンは足りているが念のためとしてアストラゼネカワクチンを高齢者に限って使うことを容認した。

今回の整理を誰が言い出したのかはわからないのだが報道を見る限り田村厚生労働大臣が状況収拾に乗り出したという記事が早かった。おそらく厚生労働省が不安を感じ始めたのでではないだろうか「田村氏は「(ワクチンが)自治体や医療機関に在庫がたまっている可能性があり、調整することが必要だ」と述べた。」と書いてある。

今先行受付が始まっている分はおそらく「高齢者の余り」だったんだろうなということがわかる。実際には高齢者分は余っていないかもしれない。最初の接種を受けても次が来るかどうかわからないなどと言っている記事もあった。

例えば山形市はウェブサイトでこうお知らせをしている。6月25日から新規の1回目の予約受付を停止します。接種を希望する65歳以上の高齢者の方で、6月24日までに接種予約ができなかった方は、コールセンター(0120-567-328)までご相談ください。

情報をこまめに探した人はとりあえず最初のワクチンを接種してもらえるのだがテレビのいうことに従って素直に待っていた人たちは7月以降に予想されるワクチンがない状態に振り回されるのかもしれない。さらに最初に接種してもらえたからといって次が来るかどうかもよくわからない。

これで不安にならない方がおかしい。

今のまま感染状況がある程度の状態に留まっていればおそらく大したパニックは起こらないのだろうが仮に新しい型の変異株が猛威を振るった場合「早く接種してもらいたい」という人が出て来るだろう。それとは別に若年層にはワクチンを打ちたくないという人が大勢いる。さらにここにオリンピックがかぶさってくる。状況は誰にも読めない。

残念ながらテレビもこの混乱に加担してしまっている。河野大臣が出てくるパートでは大臣の機嫌を損ねないように「すべてはうまく行っていますよ」というメッセージを流す。それが終わると「実は足りないらしい」というよう話になる。これでは単に不安を煽っているだけである。なぜ河野大臣を出演させたのかTBSは説明する責任があるだろう。

今回の話は千葉市での状況を見ながら書いている。おそらく別の自治体では全く状況が違っている可能性がある。ネットの情報も信頼できないから自分の足で調べる必要がある。

まさに悪夢の自民党政権である。

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