ウガンダは逃げ出したくなるような国なのか?

泉佐野市に滞在していたオリンピック選手の一人が書き置きを残して逃亡した。ウガンダ人で日本で仕事を探すつもりだという。これまでの文脈から考えると「オリンピックバブルは完全に崩壊している」として大騒ぎになるのだろう。だがこのニュースを見て「ウガンダって逃げ出したくなるような国なんだろうか?」と思った。調べて見て「人類がコロナに打ち勝った証」という言葉がいかに空疎で傲慢なものだったのかということもわかった。順番に見てゆきたい。




まさかオリンピック選手が逃亡するなど流石に泉佐野市の職員も予想できなかったに違いないとは思うのだが、実は国際スポーツ大会は逃亡のメジャールートだったと東京スポーツが伝えている。つまりウガンダは誰でも逃げ出したくなるような国らしい。こうした国はウガンダだけではないのだから、ホストタウンの職員はバブル維持だけではなく国境警備員なみの注意力で選手団を監視しなければならない。もう「知らなかった」では許されない。

まずウガンダの新型コロナの流行についてみてゆく。ジョンズホプキンズ大学の統計を見ると、ウガンダは2021年6月ごろから二度目の流行のピークが来ている。きっかけはおそらくデルタ株(インド型)である。人口は4400万人程度だそうだがワクチンが完全に住んでいる人は4,000人ほどしかいないそうだ。絶望的な数字である。

例えばWHOはワクチンの三回目接種を非難している。エチオピア人のテドロス事務局長はアフリカの公衆衛生に関心が高い。だがこのWHOの声を聞こうとする先進国はほぼないと言って良い。WHOはファイザーとモデルナを非難している。市場経済が優先されれば発展途上国にはワクチンはいつまでたっても来ない。だからコロナはそもそも克服できない。

次にウガンダの経済状態について見てゆく。ウガンダは天然資源に恵まれるが世界の最貧国の一つである。もともとイギリス領だったが複数の王国の連合体として独立した。その後社会主義政権ができると軍事クーデターが起きて覆された。クーデターを起こしたアミン大統領はアフリカの黒いヒトラーとか食人大統領などという異名があった。

背景事情を調べてゆくと例によってイギリスの間接統治手法が原因になっている。イギリスは南部を優遇し北部を冷遇した。

現在の大統領はムセベニ大統領である。2021年初頭に選挙があり6期目に突入した。南部出身のムセベニは抵抗軍を作って全権を掌握した。アミン大統領は北部出身で南部を抑圧していたのだが今度は北部が抑圧される側になった。すると北部には神の抵抗軍と呼ばれるカルト組織が生まれる。

政府は神の抵抗軍を壊滅させることはできなかった。神の抵抗軍は子供を誘拐して兵士にするなどの戦争犯罪を繰り返している。ハフィントンポストは2016年に神の抵抗軍について書いている。2021年には神の抵抗軍幹部が逮捕されているが彼自身も元は拉致されてきた少年兵だったそうだ。悪い連鎖が断ち切れないのだ。

イギリスは南北で民族が違うことを利用し南部を優遇した。こうして南部人に北部のアチョリ人を迫害させるという間接統治はイギリスの得意技と言って良い。アミン大統領は北部のアチョリ人であり政権を奪還したムセベニ大統領は南部出身だ。ムセベニ政権下の南部はそれなりに経済成長しているそうだが、北部には抵抗勢力が残り貧しいままである。

ウガンダからの選手団がコロナの濃厚接触者だったというニュースがあった時には特になんとも思わなかったのだが実はウガンダは第二波の状態にあった。感染爆発が起こる国からも特例で日本に選手団を迎え入れるというのが菅政権の方針だ。だからバブル対策は念入りに行わなければならない。だがそもそも菅政権には国民保護という気概はない。単に成田空港を見て自己満足に陥っているだけである。

オリンピックを開催しなければ日本人がリスクにさらされることはなかったとも言えるのだが「世界の現状から目を背ける」ということにもなってしまう。オリンピックは世界の問題を日本に受け入れるというパンドラの箱になっている。つまりウガンダ人が逃げ出したというニュースだけを見ても世界のコロナ事情がいかに過酷であるかということがわかってしまうのだ。とてもコロナに打ち勝ったとは言えないのだが、発展途上国から目をそらすことで「先進国ではワクチンが行き渡ったから我々はコロナに勝ちました」と宣言しようとしている。これはとても傲慢な態度である。

日本人がほどんと注目しないウガンダのニュースを探したところBBCがまとまったページを作っていた。ニュースを辿ってゆくとインド変異種(デルタ株)が見つかったのが4月30日だそうだ。そこからあっという間に第二波が始まった。感染は議会にも広がり100人が感染したということで議会は二週間停止になったそうだ。

ただ色々見てゆくと「単にコロナ対策ではないのではないか?」というような政策が散見される。

2021年初頭に大統領選挙が行われたようでムセベニ大統領の6選目が決まった。一方で対立候補ボビ・ワイン氏(39歳のミュージシャンだそうだ)は逮捕された。ボビ・ワイン氏はSNS税に反対していた。ムセベニ大統領のインターネット税にどんな目的があったのかはわからない。単に新しい収入として期待されただけなのかもしれないしネットを通じて国民が政府に反旗を翻すのを恐れたのかも知れない。

いずれにせよSNS税は抗議運動を引きおこしボビ・ワイン氏という新しい政敵をうんだ。だが、6期目に入ったムセベニ政権はインターネット税を新しくしたそうだ。人々がVPNの迂回路を見つけてしまい期待した税収が得られなかったのでそこで税金を新しくして12%の物品税をかけることにしたのだという。おそらく反政府運動はネットを通じて拡散するのだからネットに税金がかかれば人々はソーシャルメディアへのアクセスができなくなると考えているのではないか。

ただ、インターネットに課税すると小規模ビジネスを始めようとする若い人たちのチャンスを潰すことになるとBBCは書いている。政権維持のためには経済成長を犠牲しても構わない。長年権力を保持ししている人はそう考えるのだろう。

その他運輸大臣が襲撃されて娘さんと運転手がなくなったりしている。政権は全ての車両に追跡装置をつけるという法律を提案しているようである。国内の反対運動を抑えるためには情報を掌握して監視の目を広げようとしている。中国くらい徹底的にやればいいのかも知れないのだがウガンダのように行政システムが脆弱な国ではおそらくこれは難しいだろう。

自民党も安易に「緊急事態条項が必要だ」と言っていた時代があったが政権が打ち出す施策はことごとく失敗している。それでも日本がなんとか回っているのは地方自治体が政府に反抗し、自民党や公明党と言った政党に支援団体が抗議を寄せるからである。

民族対立から独裁に陥った国がいかに悲惨な状態に陥っているのかを目の当たりにすると緊急事態条項がないと統治ができないなどと言っている人たちに政権を取らせてはいけないんだなということを強く感じる。

と同時に世界にはコロナに負けている国がたくさんある。「自分たちはワクチンを打ち終わったから世界はコロナに勝ちました」という言い草がいかに噴飯ものかわかる。我々は単に世界の厳しい状況から目をそらしているだけなのである。

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