マジョリティの支持が得られれば大した抵抗運動は起きない

発展途上国で新型コロナウイルスによる政情不安が広がっているそうだ。ロイターがまとめの記事を出しているので読んで見た。社会的連帯が失われてマジョリティがいなくなったり、マジョリティが自分たちは非主流に追いやられていると感じたところで大きな社会不安が起こるのだそうだ。




  • 開発途上国で社会不安が広がっている。新型コロナウイルスが原因で所得格差が拡大したのが原因だ。
  • コロナ禍はすでにあった断絶を顕在化させる。
  • 民主的な異議申し立ての通路が破壊されるのが前兆現象の一つだ。司法の独立や、報道の自由、集会の自由といった前提が破壊される。
  • またマジョリティが非主流に追いやられていると社会不安のリスクが増大する。
  • 何が沸点(ティッピングポイント)になるかは予想ができない。つまり暴動のきっかけには大した意味がない。
  • 政治的な抗議運動は経済にさほど大きな影響を与えないが、社会不安が背景にある場合には経済が大きく後退する可能性が高まる。
  • 独裁的な国ほど株価の下落が大きい。
  • 一部の国では給付金の拡大で抗議運動を抑制しているが借り入れコストの増大につながる可能性が高い。
  • いったん社会的連帯が失われると回復は難しい。政府がその局面を打開できるのか別の政治勢力に取って代わられるのかは(今の所)わからない。

この記事を読んでいた時ちょうど中国について書いていた。中国は共産党専制の国だがマジョリティを抱き込んでいるために今のところ反乱が起きていない。香港やウイグルなど少数の例外がいるが、大多数の人たちに共産主義はいい体制なのだと信じ込ませている。実は少数者を弾圧することで大多数の人たちに満足感を与えることができるのである。

多数派に統治者気分を味あわせておくことで政情不安を防ぐことができているということになる。だがそのためには経済成長が必要だ。ローマ帝国で言うところのパンとサーカスである。だが、ローマ帝国と違って中国はアメリカ経済に依存している。アメリカからの投資が止まったり逆に投資できなくなったりすればおそらく中国経済は行き詰まることになるだろう。

いずれにせよ民主主義か専制主義かというのはあまり政情の安定には関係がなさそうである。また経済の成熟度合いも実は安定性とは関係がなさそうだ。フランスの例を見てみたい。

小規模の反乱は発展途上国だけでなく先進国でも起きている。フランスでは政府の抗議運動が起きていた。社会的連帯が決定的に失われているとは言えないもののかなり危うい状態にある。

このうちフランスのイエローベスト運動は新型コロナとは関係なく起こった。2019年に書かれたNHKのこの記事は状況を次のようにまとめている。

  • もともと燃料価格高騰と燃料税引き上げが口火だった。昨年(2018年)夏ごろから国民の中でも不満の声が上がり始め11月から毎週土曜日に全国で抗議デモが組織された。
  • マクロン大統領は週明けにいくつかの妥協をテレビで国民に約束せねばならなかった。低所得者層への手当の増額・法定最低賃金の引き上げ・年末ボーナスの支給・社会保障費税の増税廃止を提案した。
  • だがマクロン大統領は富裕税廃止は撤回しない方向だった。
  • この抗議運動は特定の政治団体や圧力団体に支えられたものではない。参加者の中心は30代-40代の比較的若い人たちで職業はバラバラ。運動の代表がだれなのか交渉相手は誰なのか特定しにくく説得が難しい。
  • EU財政基準で緊縮財政を強いられた結果、中産階層が没落し貧富の格差が大きくなっている。これが根本的な原因だ。

フランスではEUの緊縮財政とエリート中心の政治が一般市民から反発を受けていたようだ。おそらくきっかけはなんでも良かったのだろう。これはチリの反乱が地下鉄運賃の値上げから起こったのと同じである。フランスでは今でもデモが続いているのだがおそらく合理的な思考に基づいた講義運動ではない。行動規制の再導入に怒っている人たちがいる。

フランスでは、レストランなどの利用で、接種か検査の陰性を証明する「衛生パス」を求めるマクロン政権の方針に対し、全国で「暴君マクロン」「恥辱のパス反対」と叫ぶ抗議活動が行われた。推計16万人が参加し、警官隊とにらみ合った。ただ、BFMテレビの世論調査では4分の3以上が政府の方針に賛成している。

フランスやイタリア、反コロナ規制でデモ

フランスで新型コロナウイルスワクチンの接種を促す政府の対策に対する抗議デモが激しくなっている。7月31日には各地で計20万人以上が参加し、「健康の独裁だ」などと声を張り上げた。現状では国民の過半は対策を支持しているものの、デモが長引けばマクロン政権は見直しを迫られる可能性もある。

フランス、ワクチン接種への抗議デモ激しく

行動規制の導入も嫌だしワクチン接種も嫌だ。でもコロナはなんとかしろといっている。これがいったん社会的連帯が失われた国の姿である。一旦失われた社会連帯が自然に復活することはない。

ここから考えると日本の有権者が菅政権の支持率を落としつつも自民党政権への異議申し立てにまで発展していない理由がよくわかる。日本では行動規制に対する反発は起きておらず政府のメッセージを無視して動き回るというような状態になっている。また高齢者にはワクチン接種が進んでおり彼らは死亡など最悪の状態からは守られている。

日本政府は借り入れを増やしつつ年金システムを維持している。これはもともとはマルクス・レーニン主義を学んだ革新官僚が取り入れた社会主義的政策である。取り入れた目的は戦争の遂行と維持だった。これが戦後になって議会政治に取り込まれた。吉田茂も中国満州での経験があり岸信介は満州の五カ年計画を立案した当事者だったそうだ。

つまり日本の今の安定は政府の大規模な借金と戦前の社会主義政策に支えらえていることになる。新型コロナで影響を受ける人たちは飲食業などの経営者・医療関係者・一部の感染者なので「かわいそうな一部の例外」ということになってしまい、政権が自滅しない限り大した反乱は起こらない。だがこの経済は持続可能ではない。このまま進めばやがて年金財政にファイナンスができなくなり、大きな社会不安に直面することになるだろう。

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