頭が小さいほどスタイルが良い女性だと考えられるようになったのはなぜなのか?

Quoraに「日本で頭が小さい女性がスタイルがいいと考えられるようになったのはいつ頃からなのか?」という質問があった。ミスユニバースで三位入賞した伊東絹子さんが八頭身美人という言葉を流行らせたという回答が複数ついていた。

その後、児島明子さんがミスユニバースで優勝した。1960年代になるとツイッギーというイギリス人女性が来日しミニスカブームが起きた。つまり頭が小さいだけでなく小枝のように細い女性が「グローバルスタンダードなのだ」という認識が徐々にできあがっていったことになる。




では、そもそも「なぜ頭が小さい女性がグローバルスタンダードになったのか」という疑問が残る。面白そうなので続きを書いて見ることにした。一言で言うと服を目立たせるためのイラスト技法だった。これが美の基準になり現実を塗り替えてしまったのだ。つまり幻想があるべき現実を置き換えるという主客転倒が起きた。

これを実現したのが「ファッション雑誌」である。具体的にはVougeの存在が大きいのではないかと思う。

すでにこのブログでも観察したように現在のファッション・シーンの基礎を作ったのは、シャルル・フレデリック・ウォルトである。当時のセレブだったナポレオン三世夫人を顧客に持っていたがフランスが再び共和制に移行したため富裕な市民に洋服を売り込む必要に迫られた。この時に生まれたのがファッションショーという手法である。

Vogueが「写真で振り返る、ファッションショーの歴史を動かした立役者たち。」と言う記事を書いている。最初にモデルを使ったのはウォルトである。次にポール・ポワレと言う人が現れた。

この時代のモデルたちのプロポーションは現実的だった。ウォルトもポワレもクチュリエ(男性裁断師)である。つまり、現実の体にあった服を作ることができる技能を持った人が当時のファッションデザイナーだったことになる。

ファッションデザイナーの教科書であるファッションデザイナーの世界―構想から実現までは理想的なファッションデザイン画の描き方を解説している。モデル体型的なプロポーションが良しとされているようだ。教科書的にはデザインを主とする「デザイナー」と呼ばれる人が出てきたあたりからデザイン画の理想体型が非現実的になっていったと認識されているようだ。

だが現実はもう少し複雑なようである。Vogueの時代からファッションイラストと呼ばれるイラストレーションがある。記事には1911年のイラストがでてくるがすでにモデル体型なのである。

ファッションイラストの女性は頭が小さいのは洋服を主に見せたいからであろう。つまり洋服こそが主役であって肉体が強調されるべきではない。バレーダンサーが肉感的でありすぎてはいけないのと同じ現象である。つまり最初のファッション画は「非現実的に見せよう」としてわざと頭や手足を小さく描いていたのだと思う。昔の日本のファッション雑誌がわざと外国人を多く使っていたのに似ている。日本の洋装は海外の雑誌を見よう見まねで裁断したところから始まっている。生活感を払拭し作り手が夢想した夢の国にいるような感覚がそのまま消費者にも持ち込まれたと考えるのが自然なのではないかと思う。だがやがてこれが消費者の美意識を支配することになる。

おそらくデザイナーがクチュリエ・クチュリエールと分離する時代にはVougeなどのイラストはすでにあったはずだ。すでに1930年の幻想的なファッションポートレート(つまり写真)には現実離れしたプロポーションの女性が登場している。幻想としてのファッション・メディアが理想体型を塗り替える。まず影響を受けたのは美意識の高いデザイナーやエディターだ。作り手たちの理想のプロポーションが幻想的なものになるとお披露目にも幻想的なプロポーションの女性たちが採用される。それが一般消費者に「美の基準なのだろう」と認識されて浸透していった。

いずれにせよ戦後すぐの1940年代後半の写真(記事やファッションショー)を見るとモデルたちの体型はすっかり様変わりしている。

おそらく西洋人に対して劣等感を抱いていた日本人は「西洋と肩を並べる日本人がいる」という現実に大いに気を良くしたのではないだろうか。

だが調べて見るとそもそも欧米で八頭身のような体型が理想化された歴史もそれほど古いものではないように思われる。つまり日本人は割と早い時代からメディアが作り出した幻想を受け入れた国の一つになった。ファッションメディアの浸透力の強さと浸透速度の速さがわかる。

日本ではその後長い間ガイジン(つまり白人のことだ)がファッション雑誌や広告で使われるという時代が続いていた。日本人をモデルにするとどうしても現実が透けて見えてしまう。

女性誌より男性誌の方がガイジン依存が強く若者向けよりも高齢者向けの方がガイジン依存が強いのではないかと思われる。若い女性はガイジン依存が低いのではと考えたのだが、実際には「ハーフ」というジャンルのモデルが多く活躍している。わかりやすいガイジンではなくもう少しわかりにくい形で浸透しているのかもしれない。

面白いことに本場のヨーロッパではゆきすぎたモデル体型は長い間批評の対象になってきた。フランスでは女性モデルのBMIが規制された。この規制もやりすぎだということになり2017年には医師の診断書で「健康である」という証明が必要になったということである。

SNSで美の基準が痩せすぎの女性であると思い込んだ人たちが拒食症になったというのが理由のようだ。オールドメディアだけの時代には問題にならなかった理想が日常に侵食するようになりついにメディアが規制をしなければならなくなったということになる。

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