環境に対する産経新聞の不思議で時代遅れの感覚について理解を試みる

毎日日本の政治記事と欧米(イギリス・フランス・ドイツ・アメリカ)の政治記事を読み比べてQuoraで配信している。欧米の記事は普通に読めるのだが日本の政治記事を読むのには一定のコツがいる。一言で言うと非論理的なのだ。この「非論理性」がどこからきているのかがわからないので苦労することが多い。一括りにして説明するなら「村人」の論理である。狭い世界で独自の価値観を持っている。一般的に課題よりも競争に夢中になる傾向がある。




面白い記事を読んだ。「G20とCOP26 岸田首相は出席の決断を」と産経新聞が書いている。G20はわかるのだがCOP26がわからない。環境問題はリベラルなテーマだ産経新聞はリベラルが嫌いなはずではないか。

一言で言えば「先進国が結束すれば中国いじめができる」と言っている。つまり単なる村の論理なのだ。

この問題に入る前に欧米で環境問題がどう捉えられているのかを見てみたい。ドイツで緑の党が入った連立交渉が行われている。ドイツにはもともと伝統的な保守政党とリベラル政党があった。だがどちらもITや環境問題などの未来への取り組みは不十分だと考えられている。これを保管しているのが緑の党だ。今回の連立交渉では環境問題がどれくらい入るかが真剣に議論されることになるだろう。つまりドイツの環境対策は政治の中核的なテーマである。

またイギリス王室も環境対策には極めて熱心である。ウィリアム王子やチャールズ皇太子は常々環境を意識した情報発信をしている。最近はエリザベス女王までもCOP26に集まらない首脳がいるということに対して文句を言ったという記事が発信された。女王は政治的な発言ができないことになっているので「マイクが情報をオフィシャルでない発言を拾った」という体裁になっているようだ。イギリスでも有権者の関心が高いことがうかがえる。

比較的余裕がある地域を中心に環境問題は次世代の政治課題だとされている。アメリカでもカリフォルニア州などでは環境問題が盛んに議論されている。

ところが日本ではこれが政治課題になることはない。「自分一人が行動したくらいでお天気に大した影響を与えることはできない」と諦めている人が多いからだろう。

試しにリベラルであるはずの立憲民主党の環境対策について見てみた。反米の流れを汲んでいる人たちに配慮した反原発が目立つくらいであとは総花的な環境対策が並べられているだけに見える。「自分たちで未来の地球を作るのだ」という意気込みは感じられない。れいわ新選組にも似たようなグリーンニューディールの取り組みが書かれている。

ではなぜ産経新聞は環境対策に熱心なのか。まずCOP26の開催日初日と総選挙が重なると言っている。だが万難を排してでもG20とCOP26には参加すべきだという。「何が何でもバイデン大統領をお会いして直接対談をしなければならない」と言っている。バイデン大統領は環境対策に熱心なので日本も歩調を合わせなければならないと考えているのだろう。

だが産経新聞が本当に意識をしているのは中国だ。COP26で「反中環境包囲網」を作れといっているのだ。中国はCOP26には後ろ向きなので先進国が足並みを揃えることができなければ中国が二酸化炭素をバンバン排出して成長してしまう。だからそれを阻止しなければならないと言っているのである。

産経新聞にとって人権と環境は中国を虐めるための道具に過ぎない。COP26に参加しなければバイデン大統領の機嫌をとることもできないし中国にもトクになってしまうと言っていることになる。まさに村人の論理だ。

産経新聞が特殊なのだとは思わない。おそらくこれが普通の日本人の政治感覚なのだろう。大局的なことはわからないし興味もないのだがとにかく隣の人に負けてはいけないと考えてしまうのだ。だいたい近所の自治会のおじさんレベルの感覚でなんとなく議論しているんだろうなということがわかる。

産経新聞の感覚はおそらく一時代前のものである。環境対策が単なる綺麗事だった時代の話だ。中国は後発工業国として二酸化炭素排出削減が自国の経済発展の妨げになると主張している時代が確かにあった。

バイデン大統領は議会の説得に苦慮している。民主党の産炭地選出議員が環境対策の予算化に反対しているらしい。外交で華々しいことを言っても足元がまとめられないから信頼できないというのが最近の民主党政治の特徴なのだがここでも弱腰ぶりが目につく。だが見方を変えてみれば「やはり会議に参加するのであればそれなりの対策を発表しなければ話にならない」と考えているとも言える。それだけバイデン政権とその支持者にとって環境対策は大切なテーマなのである。アメリカもここまでやっているのだから日本がノープランで会議に参加してニコニコとバイデン大統領を支持しても「あなたは何をしに来たんですか?」ということにしかならない。

一方で習近平国家主席はCOP26には参加しないことを決めているようだ。これだけを見ると中国は後ろ向きだなあと思う。おそらくエリザベス二世女王が批判しているのは中国のような国だろう。だが、実は国内で停電が起きるのも辞さずに脱炭素化を図っている。つまり中国もこのまま環境対策を何もしなければ非難されるであろうことがわかっている。中国は中央集権国家なのでこうなると停電を起こしても電力削減に努めるだろうしおそらく新技術開発にも乗り出すだろう。中国がどう出てくるかはわからないのだが油断は禁物といったところだろう。

いずれにせよおつきあいでとにかく会合に出てバイデン大統領のお追従を言っているだけでは全くお話にならないし「レジ袋がどうだこうだ」といっているようなレベルの話でもなくなっている。さらに中国も参加して環境問題に取り組もうとするかもしれない。

日本ではほとんど政治課題として取り上げられることがない環境対策だが、岸田総理は党内外の懐疑派を説得して欧米に足並みをそろえなければならない立場にいるのである。

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