ナイジェリアで電子通貨eナイラが導入される

「新しい技術」の導入は成長につながる。今回は電子マネーの導入について見てゆきたい。ナイジェリアで電子通貨eナイラが導入された。中央銀行が管理する小さな国で導入の事例はあるが人口規模が2億人という大きな国で電子通貨が導入されるのは史上初めてのことである。この後中国がデジタル人民元の導入を計画しており、スマホがそのまま財布として使えるという国は増えるかもしれない。中国はライバルとなりそうな暗号資産を禁止しつつあるそうだ。全てを政府が補足しておきたい中国ではなし崩し的に導入が進む暗号資産を禁止するよりも取り入れてしまった方が良いと考えたのだろう。




どうしてナイジェリアは電子通貨を導入したいのかについては詳しい解説記事がなかった。まずは通貨事情から調べてみた。産油国ナイジェリアの経済は大きく石油に依存しているのだが、最近は石油が売れなくなってきている。 このため外貨の獲得にはかなり苦労しているようである。

ちょっとした貿易をするにも外貨の獲得が必要なのだが、肝心の通貨が手に入れられない。そこでナイジェリアでは闇市場が発達しているそうだ。レートは公式とかなり乖離しているようだ。

西アフリカにはすでに通貨がある程度統合されている領域がある。その領域を集めて新通貨を作ろうという計画があった。それが「エコ」である。通貨統合をするためには域内の政府が財政規律を守る必要があり具体的な目標が定められている。結果的にエコの導入は2027年まで延期になってしまった。単一通貨への道のりは遠そうだ。

  • 10%以内の年間インフレ率
  • GDP比3%以内の財政赤字
  • GDP比70%以下の総債務残高
  • 中央銀行による財政赤字補填(ほてん)を前年度税収の10%以内に収めること
  • 3カ月分以上の輸入額に相当する外貨準備高を保有すること

ただこれらは外貨についての話なので内国通貨の話とは関係がなさそうだ。個人ブログを探すと銀行へのアクセスができない人が大勢いると書いている記事が見つかった。だがモバイル機器(必ずしもスマホではないようなのだが)は普及しているのだそうだ。

金融機関を介在させるような決済を広げるためには銀行網を整備するよりモバイル・ネットワーク経由の金融網を整備した方が早道ということなのかもしれない。

eナイラの広報ページを実際に見てみると「銀行口座もIDもない人」であってもeナイラの口座が作れるようだ。ただ決済できる上限金額が制限される。発展途上国には実にいろいろな条件の人がいるということがわかる。国民番号や戸籍ではなく「電話番号」が社会インフラの役割を果たしているのだ。

ニュース映像を見るとeナイラは個人決済用のアプリとビジネス用のアプリが荒れば使えるようだ。つまり、現在はスマホ利用が前提ということになる。仕組みとしてはPayPalに似ている。違いはこれが国家保証のある制度だという点だけだろう。

デジタル通貨のプラットフォームが普及すれば飲み屋の割り勘から個人間送金まで随分と楽になる。一方で送金手数料収入に依存している既存の銀行などは導入には反対しそうだ。

ただナイジェリアのニュース映像にはやたらと「透明性」という言葉が出てくる。

為替に闇市場があることからわかるようにナイジェリアは地下経済がかなり発展している。eナイラが政府にどのような利点があるのかについて説明した記事があるのだが「透明性が増して税金が集めやすくなる」というものがあった。おそらくは政府が取引履歴を補足しやすい仕組みになっているのだろう。「eナイラを導入すれば脱税は過去のものになる」と書かれている。日本で「国家が個人の金融資産を捕捉しやすくする」制度になればリベラル系の野党が反対するのは目に見えているが、ナイジェリアではこれが堂々とメリットとして掲げられている。

With eNaira, tax evasion is history because eNaira ensures the traceability of taxable assets and enforces transparency in the taxation systems thereby increasing revenue.

政府に信頼があるのならそもそも地下経済は発展していないはずだ。政府を信頼するならいいことのような気がするが「どうせ納税しても自分たちの元には還元されないだろう」と考える人が多くなればeナイラ導入は進まないのだろうという気がする。高額紙幣を廃止してしまえば国民はeナイラを利用せざるを得なくなるので脱税はやりにくなるということなのかもしれない。所得隠しは難しくなる。

日本はサラリーマンが多く政府が納税状況が把握しやすい仕組みになっている。レジにお金を入れるという慣習も行き届いている。だから地下経済はそれほど発達しておらずおそらく消費税の脱税もそれほどないはずだ。また郵便局が全国津々浦々にあるので金融機関へのアクセスは難しくない。

一方国民の側にITリテラシーはそれほど高くないために電子決済が普及しないというデメリットもある。電子決済が普及すれば今のように高いお金を払って銀行間送金をやらなくてもよくなるのでいつまでも銀行依存の強い経済を生きて行かなければならない。

つまり現行制度で十分だと思う人が多ければ多いほど新しい技術の導入は遅れてしまうものなのである。日本でも菅政権下で中央銀行管理のデジタル通貨(CBDC)の検討が始まっていた。やはり「中国がやっているなら我が国もやらなくては」という焦りがあるのだろう。ただマイナンバーカードの普及すらおぼつかずPayPalもなかなか普及しない国で「国民主導でデジタル通貨導入を」をいうような議論の機運はあまり生まれそうにない。

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