本当に2021年の選挙では維新が躍進し立憲民主党が失速したのか?

コロナで不満が溜まっているから自民党は議席を落とし立憲民主党が躍進するだろうと思っていた。だが、立憲民主党への期待が全く伸びない。おそらく何か原因があるのだろうと思いついに6000人コミュニティでは立憲民主党の支持を表明するのはやめてしまった。

なぜダメだったのかを聞いてみたのだが「共産党と組んだのがいけなかったのだろう」と言うような観測が聞かれるのみである。そもそも関心を持たれていないらしい。代わりに躍進したのが維新の会だった。いよいよ立憲民主党は終わりなのか?と思った。

だが、これらは全て感覚でしかない。客観的な数字が欲しい。




前回の衆議院選挙とは比べられないので参議院選挙と比べるためにブロックごとの比例票をし集計して全国区にしてみようと思い立った。こうすると単純に数字だけで比べることができる。政党名での投票なので純粋に政党の人気がわかるからだ。一方で政権選択ではない参議院と衆議院選挙では投票率が変わるため「動員数」に差が出る。

これで見ると実は立憲民主党に入れた人の数は増えている。

  • 「一発屋」の政党は支持を減らしている。単純に無党派層に頼るとこれ以上大きな塊にはなれないのだろうと思われる。
    • N党は98万から79万に19万減らしている。
    • れいわ新選組は228万から221万に6万減らしている。Twitterではかなり盛り上がっていたしポスターもたくさん見かけた。しかし、現在の世の中に強い不満を持つ層はこれ以上は伸びそうにない。ただし東京は若干支持が強い。
  • 既存の補完政党はおそらく支持者層が固定されているのだろう。それほど変わっていない。支持者が高齢化しているという話も聞く。
    • 共産党は448万から416万に31万減らしている。
    • 公明党は653万から711万に57万増やしている。
    • 社民党は104万から101万に2万票減らしている。
  • いわゆる主要政党は国民民主党以外は得票が増えている。参議院議員選挙よりも投票率が高くそれだけ多くの人が動員されたこともわかる。「政権選択選挙」という言葉は実はある程度浸透していたのである。
    • 自民党は1771万から1991万に220万票増やしている。コロナ批判を受けてかなり危機感があったものと思われる。
    • 立憲民主党は791万票から1149万票に357万票増やしている。意外と善戦している。
    • 維新は490万から800万に310万増やしている。数としては立憲民主党に劣るものの大阪を中心とした近畿圏に注力したために議席が「総取り」できた。
    • 国民民主党は348万から259万に88万減らしている。立憲と維新の中間という立ち位置がわかりにくかったのだろう。

一般的な評価では立憲民主党が負けたことになっている。357万票も増やしたのに躍進できなかったという戦略上の問題に過ぎないことがわかる。一方で維新は310万票増やしているだけなのだが(それでも倍増近いのだが)実質的には維新が勝ったというような印象になっている。

おそらく維新が躍進できたのは全国ではなく大阪圏を中心にリソースを展開したからだろう。関西では吉村知事がコロナでテレビに出ずっぱりだったという話も伝わってくる。単純露出も増えたのだと思う。一方、立憲民主党は総裁選劇場で露出も増えなかった上に各ブロックに分散したために死に票が増えたのだ。

比例議席は176ある。これを各選挙区の得票数に機械的に当てはめてみた。326,508票ごとに一議席となる。大阪に偏っている維新が不当に議席を獲得したのではと思ったのである。

  • 自民党 61議席
  • 立憲民主党 35議席
  • 維新 25議席
  • 公明党 22議席
  • 共産党 13議席
  • 国民民主党 8議席
  • れいわ新選組 7議席
  • 社民党 3議席
  • N党 2議席

この中で一番割りを食ったのはれいわ新選組と共産党だった。れいわ新選組は3議席を獲得しているのだが全国区であれば7議席を取ることができていた。共産党も全国比例であれば13取れているはずなのだが実際には9議席しか獲得できていない。つまりこの二つの政党は4議席損をしていることになる。次に損をしたのが国民民主党と社民党だった。それぞれ3議席「損」をしている。おそらく各ブロックで1議席に満たない得票が分散し死票になったせいだろう。

一方で議席で得をしているのは自民党の11議席である。やはり大政党が得をする仕組みになっていることがわかる。立憲民主党も4議席得をしている。つまりある一定の規模を確保すると得になる制度だということがわかる。

つまり、立憲民主党は自民党ほど全国政党にはなれていないがかといって弱小政党でもないという難しい立ち位置にいることがわかる。

維新はさらにこの下の段階にある。だから議席はイーブンだった。損も得もしていない。全国では10%台のところばかりなのだが、関西だけは33.9%という支持を得ている。近畿では自民党を抑えて域内第一位だった。つまり維新はリソースを関西に重点配分することで無駄を防いでいるのだ。不満の多い地域でドミナント(主要政党)化するという戦略が当たったことになる。

マイナーな政党を応援していると「なぜ好き好んでその政党なんですか?」と言われて不安になってしまうのだがメジャーになるとその不安がなくなる。さらに自分が投票した候補が当選するので選挙速報を見て良い気分に浸れる。

ただ、全国でいきなりメジャー化できない。であれば地域を限定してメジャー化すれば良いのだ。これがおそらく維新の戦略だった。

獲得議席女性得票得票率
維新10258,6906.3%
維新20617,53110.0%
維新30863,89711.7%
維新20858,57713.3%
維新10361,47610.3%
維新21694,63010.3%
維新1023,180,21933.9%
維新10286,3029.2%
維新11173,82610.2%
維新20540,3388.6%
維新の得票率

漠然とした不満を持っている人たちはマイナーな政党を応援したくない。自分までマイナーになった気分に陥ってしまうからだ。おそらくれいわ新選組の応援団は今そんな状態にあるのではないかと思う。おそらくれいわ新選組は全国から撤退して東京で面を作る作戦に切り替えたほうがいい。ある地域でメジャーになれば「いい気分」に浸れるからである。

現在、東京のメジャーは小池百合子東京都知事だ。このため「小池さんが新党を作ってくれないかな」という期待が強いようだ。Quoraで聞いたところ「神奈川で菅・河野・小泉派を作って欲しい」という人もいた。改革には期待しているがマイナーな左派リベラルを応援するのは嫌という人はかなりいるのではないか。

この辺りに日本人のマウンティング気質が出ている。問題解決がしたいわけではなく自分は多数派だということを周りに顕示したい人が多いのだろう。

立憲民主党はすでにこの段階を過ぎているので全国で支持基盤を確立し地道に地方政治に根を張るしかないということになる。実は首都圏の県庁所在地では実績が上がっている。千葉県知事選挙・千葉市長選挙・埼玉県知事選挙・埼玉市長選挙・横浜市長選挙で成功したやり方である。

共産党も維新もはこれらの選挙には関与していない。共産党はおそらくこれ以上支持者を伸ばすことはできない。基礎票は持っているが広がりは期待できないようだ。維新もまたこの地域ではまだよそ者扱いだ。

更に言えば「今回、政権選択選挙だから」という理由で投票所に足を運んだ人たちが次の参議院選挙にも足を運ぶようにしなければならない。つまり今回獲得した300万人以上の人に次の選挙でも投票してもらう必要があるだろう。

大阪を中心とする関西は東京への「恨み」から相対的剥奪感を持っているように思える。また中途半端な中道政党である国民民主党が比例票を減らしていることから一部はここから流れてきたのだろうということもわかる。今回は維新が目立ったので「左派リベラルが嫌われ中道が求められた」という見方をされた。途中で共産党と協力したことで立憲民主党=リベラルという印象もついた。だが、成功している地域では地元の保守と結びついているところが多い。

残念ながられいわ新選組やN国からわかるのは批判票の定着率はそれほど高くない。れいわ新選組は頑張って200万人も動員したがおそらくこの辺りが今のままでは成長限界なのではないかと思う。

また公明党・共産党・社民党という高齢者に依存する政党の支持者はこれ以上は増えないだろう。そうなると立憲民主党は自力で支持基盤を獲得して維持する以外に国民政党になれる見込みはないということがわかる。立憲民主党が模倣できる政党はどこにもない。

このように概観すると「共産党と組むか維新と組むか」という議論自体にあまり意味がないだろう。さらに2019年から比べると比例票が増えていることからおそらく政策自体は間違っていない。単に政党が成長する上でのエアポケットに入ってしまっただけなのである。

ただし維新の党はこれとは全く違ったアプローチをとっている。まずはある地域でドミナントになることを目指し実績を積んで支持を集めているのだといえる。地方議会や首長の大切さがわかる。

日本人は村人気質が強くよその地域に対した関心を持っていない。だが選挙制度自体はアメリカを模倣している。このため全国で単純に支持を広げるというやり方ではかなり徒労感が大きくなってしまうのだろう。「選挙制度を見直せばいいのに」と思うのだがしばらくはこのやり方でやってゆくしかなさそうだ。

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