ユニクロはいかにしてファッションを殺すのか

最近、誰も読まないのにファッションの話を書いている。太ってしまい似合う服を探す必要に迫られたからである。ただ、一度気になると背後にある仕組みを知りたくなる。意外とオタク体質なのかもしれないなあ、などと思っている。

さて、そんななか古着屋でユニクロのウルトラライトダウンを見つけた。980円だった。ユニクロ製としては高い価格設定なのだが(たいていユニクロのものには280円という値札がついている)ほかのアウターに比べると格段に安い。

一応、評判を調べてみたのだが、ネットでは賛否両論があるみたいだ。意外と暖かいとか、フェザーが90%も使われているという評判がある一方で「すぐ破れるのではないか」という懸念もある。

が、1000円弱なのでそれでもよい。ただし、古着屋なので色は選べない。紺一色のみしか置いていなかった。無難な色だ。

さて、着てみて驚いた。そのデザイン性の高さである。皮肉なことにユニクロはデザインを理解していないので、何にでも合う無難な形をしている。さらにライトダウンには芯がなく、体の線が見えるほどぱつぱつでもない。つまりどんなボトムでもなんとなく合ってしまうのである。ジッパーを閉めてしまえばボトムとライトダウンしか見えないのであとのことを気にする必要もない。ある意味制服みたいな感じである。

おしゃれが好きで体型に自信があるというような人には物足りないかもしれないし、自分のセンスを見せびらかしたいような人にも向かないかもしれない。デザインセンスにまったく自信がないので「これは楽だなあ」と思った。

アウターはいくつか持っているが、少なからずボトムの形を選ぶ。それはアウターがそれなりのコンテクストを持っているからである。そこでコーディネートの必要が出てくる。だが、コーディネートの仕方は誰も教えてくれない。なぜ服にはマニュアルがないのだろう。

デザインからの開放を目指して、最近はシンプルコーデというのが流行っているらしい。「さあデザインから開放されるぞ」と考えると大きな間違いだ。OCEANという雑誌には2つのことが書いてある。

  1. シンプルコーデを着こなすのは体型を鍛えること。立ち方や歩き方によって大きな違いが出る。
  2. 定番商品こそ女子の目が光っているので、ディテールには手を抜かないこと。

特にこの「2」が面倒くさい。アパレルで働いている人というのはファッションに興味がある人なのだろう。子供のころからファッションセンスを磨き続けて今に至る。だからそのセンスを見せびらかしたくてしょうがないのではないかと思う。ファッション女子も男子を指導したくて仕方がないのかもしれない。

一般の消費者はそういうことを「面倒くさい」と思っているのだが、ファッション知識を得ようと思うとこういう人たちにお付き合いしなければならない。だが、ファッションオタクの人たちは実はルールについて「経験的になんとなくは知っていて」も「それを体系的に伝えること」はできない。そこで一般人はさらに混乱するわけだ。

そこにユニクロのようなデザインのない製品が出ると、ファッション素人は飛びついてしまうのだ。いったんユニクロでデザイン性のないものを選ぶと、ボトムは何でもいいわけで、ユニクロジーンズでもよいということになる。そうしてファッションというものが死んでしまう。

これが5000円という価格だとちょっと考えようかという気持ちになるのだが、1000円くらいだと「まあいいかなあ」という気分になる。

着てもすぐに「わー暖かい」というう感じにはならないが、歩いているうちに寒さが気にならなくなり「あれ、今日はそんなに寒かったっけ?」というくらいの性能である。