「馬鹿」が変えたアメリカ政治

トランプ大統領が誕生したことでTwitterの役割が見直されているらしい。

トランプの手法は暴言で注目を集めるというものだ。これをテレビや新聞が否定的に伝える。しかしTwitterには半匿名の人がたくさんいて、多くは発言せずに閲覧だけをしている。そしてトランプの暴言はこの半匿名の人の気持ちを代表しているのだ。

この結果、トランプがかけたキャンペーン費用はヒラリークリントンを大きく下回るといわれている。逆にクリントンは多額のキャンペーン費用をポケットにしまったのではという疑念を持つ人が出る始末だ。

キャンペーン費用の安さはトランプ大統領の今後の政策に影響する可能性があるという。これまでの大統領はすべて「紐付き」政権だった。ところがトランプ大統領は安くて効率的なキャンペーンができたのでこうした「紐」がない。そのため大衆が喜びそうな政策を自由に展開することができることができると考えられている。

Twitterのようなソーシャルメディアにはいくつかの特徴がある。

  • 興味が短期的にしか持続しない。
  • 因果関係が単純化される。
  • 「隠された」情報に人が集まる。

Twitterのトピックは深く考えられることはなく、何か隠された情報があると瞬間的に人が群がる。「隠れた」といってもそれを作るのは簡単だ。たいていは二次情報なのでテレビなどのマスメディアを使って不完全な情報を流すと大衆が勝手に穴を埋めてくれるわけだ。これが特定の人に向いたのが炎上である。

Twitter向けの才能があるとすれば、それは決して自分が攻撃対象にならないことと、絶えずどのように注目を集めることができるかを考え続けることだ。あるいはベッドの中で何か考え付いたら、後先考えずに発信できるほどにしておかねばならない。これを365日繰り返せば、Twitterでスターになることができるかもしれない。

Twitterは「馬鹿発見器」と呼ばれることがある。見落としがちなのはこの「馬鹿」が集まってしまえば正義になるのが民主主義だということである。

ではどんな馬鹿が政治を動かしたのだろうか。今回の投票率は実は50%ちょっとしかなかったそうだ。前回よりも400万票ほど低いそうだが、それでも大きくは変わっていない。しかし電話調査で調査しても浮かび上がらなかった。支持を表明することが恥ずかしいと思っているのである。だが結局のところ「行動する馬鹿」が政治を変えてしまったのだ。

自分で考えることができる人は「経済界と癒着する政治家」と「ワイドショーで有名になった素人」という二者択一に嫌気がさして投票に行かなかったのだろう。この人たちは政治から排除されてしまうことになる。

今回トランプに先導された人たちに利益が還元されれば「馬鹿こそ正義」ということになるのだが、実際には搾取されて終わりになるのではないかと思う。トランプの政策は減税で政府を小さくすることなのだが、これで排除されるのは実は貧困層だ。

しかし、代わりに外国などが攻撃されている限り、この人たちは搾取されていることにすら気がつかないかもしれない。これが「トランプ大統領になると戦争になる」といわれるわけである。争いを仕掛けて自分だけは安全なところにいられると考える人だけが、大統領になれる国になってしまったのだ。