プレミアムフライデーの憂鬱

プレミアムフライデーという試みが始まるそうだ。無能な経営者に役所が加わるとなんだかめちゃくちゃなことになるんだなあと思った。

プレミアムフライデーのニュースをみたのはNHKが「毎月末の金曜日に午後三時退社を推進する」と伝えていたからだ。これをみて「早く帰っても使う金がなければどうしようもないのではないか」とテレビにツッコんだ人は多かったのではないだろうか。だが、新聞を読むと少し印象が変わる。

ブラックフライデーという言葉がある。アメリカは感謝祭からホリデームードが高まり、家族と過ごす一ヶ月がクリスマスまで続く。クリスマスが終わると通常シーズンで日本のように正月が盛り上がることはない。ブラックフライデーは感謝祭後の月曜日を指すそうで、感謝祭ギフトの売り残し処分とホリデーシーズンギフトの売り出しを兼ねているのである。アメリカの小売はホリデーシーズンに25%近くを稼ぐという統計もあるそうである。

プレミアムフライデーはつまりホリデーシーズン前提にしているので、小売業界が「毎月正月が来たらエエのになあ」と夢想ことから始まっているようだ。

これに早期退社が加わったのは何故なのかはよくわからない。安倍首相が働き方改革を進めているので、そこから連想されたものではないかと考えられる。安部側近の世耕さんの頭の中は「どうやったら首相に気に入ってもらえるのか」ということで一杯いっぱいなのだろう。それを自動的に忖度するNHKが伝えることで、なんだか支離滅裂なメッセージが生まれてしまったわけだ。

給与者の所得は減り続けている。つまり使う金がないわけで、年に12回正月が来ても使う金はない。自民党政権になってやや上向いているものの、トレンドを解消するまでには至っていない。単にリーマンショックで過剰に落ち込んだ分が戻っている程度のことだ。

加えて、小売には智恵がないので、小売シーンを盛り上げるということになれば安売りに走ることは間違いがない。セールを企画する手間は省けるだろうが、単にそれだけに終わりそうである。

この2つが加わることで「いかに安く手に入れるか」ということはゲーム化しているように思える。例えば通販サイトは定期的に「値段を下げた」品物に関する情報が送られてくることがある。これは価格情報だけが行動のトリガーになっているからだ。

最近、近所のパルコが閉店した。多くのお客が閉店セールに通っていたのでさぞかし盛況なのだろうなあと思ったのだが、出口で袋を見るとABCマートとGUの袋を下げている人が多かった。そのうち主婦たちがワゴンに群がるようになる。つまり、一部のカテゴリーキラーとワゴンだけが盛り上がっているという状況だった。「安さがプレミアム」という状態が痛感できる。

給与所得が上がらない中でテレビが盛んに生活防衛術を喧伝したためにすっかり消費者行動として根付いてしまったのだろう。

もし、プレミアムフライデーを定着させたいなら、非正規雇用の給料を大幅に引き上げて(非正規転換が進んでいるので正社員の給与をあげても給与総額は変わらないだろう)金曜日に休めるようにしなければならない。仮に正社員が金曜日に退社するようになると、非正規の人たちは金曜日に休めなくなる。増加するお客に対応しなければならないからだ。さらに、毎月正月が来ればいいのだとすれば、平日に3日くらい休みがあれば良いのではないかと思う。

しかし、そんなことをしなくても昔は「花金」という言葉があり大いに消費していた。花金だけでは飽き足らず花木(はなもく)という言葉さえあった。週休二日制度が定着しゆっくり休めるようになったことで、金曜日に遊ぶようになったのだ。プレミアムフライデーにはその頃の記憶があるのではないかと考えらえる。

プレミアムフライデーは、過去の成功体験と海外のイベントに極端に弱い今のおじさん世代の痛々しさが感じられる企画である。

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