マスコミは政治を二度殺す

「自公」ではなく「維公」で大阪が壊れる?〈AERA〉という記事を読んだ。大阪が維新によってめちゃくちゃにされ、それを公明党が支えているということが書かれている。これを読んでマスコミの罪について考えた。

大阪市と千葉市には共通点がある。自民党を中心にした翼賛政治を放置したおかげで財政的にかなり苦しい状況になった。違いはいくつかある。大阪市は過去に発展していた歴史があるので、収奪できる資産がある。一方、千葉市は東京の近郊として発展した歴史があり、農地を住宅地に変更する以外の財産を持っていなかった。

もう一つの違いがマスコミだ。大阪には在阪のマスコミがあるのだが、千葉にはそれほど顕著なマスコミがない。千葉日報と千葉テレビがあるのだが、大した存在感はない。千葉市民も千葉の動向にはたいして興味がないので、地元の政治ニュースというものが存在しないのだ。

大阪でマスコミが果たした役割は大きいはずだ。地元がうまくいっていないというニュースが広がり、それがマスコミによって拡大する。するとあまり政治に興味がなかった人が受動的に「大阪がうまくいっていない」というニュースを受け取る。しかし、中には判断能力がない人もいる。そこでインスタントソリューションに飛びつくことになる。例えば「民営化したら全てがよくなる」とか「大阪市職員が怠けているせいで大阪は発展しない」とか「非効率的な二重行政が問題だ」といった具合である。大抵は誰かを指差して非難するのだ。

一方、千葉にはマスコミがほとんどないので、こうした増幅は起こらなかった。結局市政を改善するためにやったことはとても細かい。例えばゴミをできるだけ減らすとか、今まで業者に委託していた事業を住民に委託するといった類のことである。つまり、うまくいっていない原因ではなく、何をやるのかに注目したのが千葉市と言える。こうした地味な取り組みはマスコミの注目を集めない。最近かろうじてニュースになったことといえば、中心部からデパートが消えたことと、ドローンを使った配送特区ができたことくらいだ。もう少ししたら駅ビルができたことがニュースになるだろう。

もちろん、全てが完璧によくなったわけではないのだが、職員の意識は少しづつ変わってきたと思う。財政はいくらかマシになり、住民の中には協力する人もでてきている。もちろん、興味がない人がほとんどなので、直近の市長選挙の投票率はあまり高くなかった。低い投票率があまり問題にならないのは(意地悪な味方かもしれないが)それほど潤沢な利権がないので「独り占め」のインセンティブが高くならないからだろう。つまり、今後市が財産を蓄積すると、それを利権化したい人たちがでてくるかもしれない。その時には注目度の低さは裏目にでるかもしれない。

一方、インスタントソリューションに飛びついた人たちは数年経って何も改善しないと文句を言い始める。しかし、それでも変わらないと「やっぱりダメだったんだ」ということになり、やがて関心を失ってしまうだろう。現在、国がそのような状態にあると言える。民主党政権のインスタントソリューションに飛びついた人たちがやがて離反し、安倍政権が放置されるようになった。今はめちゃくちゃな状態だが「もう何をやってもダメ」という気持ちが強いのではないだろうか。大阪市でも民営化が進んだおかげでかなりひどいことが起きているようである。それでも、自民党はダメだし、民進党は全く当てにならないと市民が考え続ければ、さほど政権担当能力のない維新が政権に居座り続けることになるかもしれず、それは衰退を一層加速させるだろう。

このように考えると、政治にはいろいろな関わり方があることがわかる。

  1. 政治に興味があり、政権を支える人たち。彼らはほっておいても政権を支持してくれるので特に何もする必要はない。これでうまくいっているのなら、特にいうことはないし、参加して社会をよくしてくれる分には特に問題もない。
  2. 政治に興味があり、政権に反発する人たち。何をやっても反発するだけなので、こちらも実はあまり気にする必要なはない。実際には社会を作るのに参加したりはしないからだ。
  3. 政治に興味はなかったが、積極的に参加する意欲を持った人たち。参加することによって、協力の面白さを知ることができるかもしれない。
  4. 政治に興味はなかったし、積極的に参加する意欲もないのだが、マスコミが提供するインスタントソリューションに飛びつき、効果がでないと離反してしまう人たち。大騒ぎして、反発する人たちを叩いたりする。社会参加には興味がなく、誰かを叩きたいだけなのだろう。

マスコミは第4カテゴリーの人たちを刺激し、間違った政策をチョイスさせた挙句、彼らを離反させることで、うまく行かない政権を放置することになるのではないかと考えられる。一方ソーシャルメディアは使いようによっては第3カテゴリーの人を刺激することができる。個人でも情報発信ができるので、市長なり政治家が一人で支持組織を作ることも可能だからである。

つまり、マスコミはまず極端なインスタントソリューションをあおることによって政治を殺し、次に失望によってもう一度殺す。そう考えると、あるいは政治報道から手を引くべきなのかもしれない。

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