慰安婦と貢女

Twitterを見ていると、前政権が完全解決したとされる慰安婦問題を韓国人が蒸し返していることが問題視されているようで、いろいろな言説が飛び交っている。人によってはいつまで反省させられるのかといい、別の人は日本が存在し続ける限り反省し続けるべきだなどと言っている。

こうした議論を聞きながら、そもそもの歴史的な認識が日本と韓国では違っているのではないかと思った。このため「いつまで反省を」という話になるのだろう。が、結論からいうといくら反省しても韓国は抗議をやめないだろう。かといって、居丈高に対応したとしても問題は解決しないのではないだろうか。

現在「奇皇后」というドラマをやっている。元の皇后で北元皇帝の生母になった奇皇后の実話に基づいているという。この中で、高麗の王が元に捉えられて大都に歩きで連行されるという話が出てくる。

元の皇后になるくらいだからさぞかし高貴な家の出だと思うのだが、実は貢女だったらしい。高麗は綺麗な女性を見繕って元に奴隷同然に送っていたのである。実際には皇宮の下女の様な仕事をしていたらしい。この貢女が皇帝の寵愛を受けたことで高麗内部では奇皇后の実家が民衆を搾取することになり、それに反抗した高麗王が廃位されたりしているようである。

このころの高麗は独立国ではなく元の冊封国だった。実際には行中書省という役所扱いだったそうだ。この行中書省はもともと日本を征服するための役所だったというがのちに高麗を支配するための役所になり王がその長官に任命されていたのだ。さらに、高麗王は元から王妃を受け入れていた。つまり、高麗の王様にはモンゴル人の血が多く入っていたのだ。

奇皇后の中に出てくるワン・ユという王は立派に書かれているが、モデルの忠恵王はとんでもない王様だったらしい。元に気に入られて王様になったものの、周囲にいた女性に乱暴狼藉を働いて何度か廃位されている。最終的には流刑先に行く途中で亡くなったという。

たかがドラマなのだが、このように背景情報を調べて行くと、いくつも面白いことがわかる。第一に韓国という国は独立国ではなかったので、王様といっても必ずしも尊敬される人ではなかったということである。そもそも朝鮮民族の血が薄かったわけで、民衆から見ると半分外国人のようなものだったのだろう。この辺りの事情がわからないとなぜ韓国人がなぜ大統領をあんなに乱暴に引き摺り下ろすのかということがわからない。

日本が韓国に対して腹をたてるのは韓国を独立国だと考えているからだ。だから国と国との約束を違えてたということに腹が立つのだろう。だが、実際には韓国人の頭の中にある政治的リーダーというのはそれほどの地位を持った人ではない可能性がある。

次に、朝鮮hあ常に外国に頭を下げ続けなければならない存在だった。ある日突然王を廃位されても何の文句も言えない存在でありつつ、かといって中国に同化もできなかったのだろう。

この服属の象徴になっているのが「貢女」である。慰安婦と貢女は違うが、外国に支配された上で女性を差し出さなければならなかったという点では似た様なところがある。日本人はこうした屈辱の歴史を知らないので「大したことがないのになぜ騒いでいるんだろう」などと思ってしまうのである。

最後の問題は韓国人が自分たちの歴史を直視できないということだ。冊封国であるということは隠しようのない事実なのだが、その中に出てくる王様は韓国人を代表しているのだから悪く描くことはできない。そこで奇皇后の中に出てくる「ワン・ユ」という人立派な王ということになっている。

こうした歴史を踏まえると、日本がお金で慰安婦の問題を解決することなど不可能だということがわかる。日本が韓国を押さえつけていたというのは事実だし、なかったことにはならない。かといって謝り続けても無駄である。謝っても、日本が朝鮮半島を支配していたという彼らの劣等感を拭うことはできないからだ。

韓国が慰安婦問題にこだわり続けるということは実は「韓国は日本に征服されていましたよ」という事実にこだわっているに過ぎない。力が弱い清の服属国であり独力で外国に対抗することがなかったから日本にやられてしまったということである。皮肉なことだが、こうした「力関係」が影響しているのだから、日本としてできることは、日本が征服国だったということを認めた上でそのように振舞うことだということになる。皮肉なことだが「弱腰の国に支配されていた」というのが、劣等感情をさらに逆なでするのである。それを「金で解決」ということだから「バカにするな」ということになるのだ。

現在は日本と韓国は宗主国と冊封国の関係にはない。対等な関係を選びたいか、それともかつての服属関係を継続したいのかということを国民に問いかけるべきなのかもしれない。これは外国を支配した経験のない日本人には難しいことなのかもしれない。特にリベラルな人たちには受け入れがたい選択肢だろう。だが、植民地を作るということはそういうことなのだ。

さて、ここまでは韓国についてのお話なのだが、勘のいい人はこれが日本にも当てはまることがわかるだろう。日本は国力の差からアメリカに負けた。そのためにアメリカ人の民主主義と憲法を押し付けられたわけである。だが、安倍政権に代表される人は、アメリカとの服属関係は維持したいし、かといって取り上げられてしまった地位は回復したいという屈折した感情を持っている。そのために、国内的には自主憲法を取り戻したいといいつつ、対外的には「アメリカの外交・国防方針はすべて支持する」という態度をとっている。さらに、軍事的には完全な服属国でありながら「対等な同盟である」などと言っているのである。

つまり日本もこのままで進めば、かつての朝鮮半島のように過去の歴史をそのままで受け入れられない屈折した歴史観を持つ国になってしまう可能性があるのだ。

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