長谷川秀夫氏に反論する

電通の新卒社員が過労死した問題で武蔵野大学の長谷川秀夫氏が次のように書いて炎上した。なんとなく社会圧力で発言を撤回させた形になっているが、何が間違っているかを説明できない人も多いのではないだろうか。

長谷川氏は「プロとして請け負った仕事を完遂させなくてどうする」といっている。だが、これは裁量という側面を無視している。

人が感じるストレスは裁量がどの程度あるかどうかによって変わってくる。裁量がある場合(特に顕著なのは自分で起業した場合などだ)に感じるストレスは、群れの最下層で意味合いを感じられない仕事をさせられるのと全く異なっている。これについては研究結果が出ている。

多くの公務員を数十年にわたって追跡した結果、40〜64歳の年齢層において、階層の最下段にいる公務員は、トップにいる人々と比べて死亡率が4倍にのぼることが明らかになった。

こうした研究が多いのはイギリスが階級社会だからかもしれない。だから、高橋さんが従事していた仕事に対してどの程度の納得感があったのかということが問題になる。その上、ツイートの分析からわかるのは、高橋さんが年次というピラミッドの最下層にいたという事実である。その上女性だったということも群れでの地位に影響していたようだ。裁量が全くない上に意味のわからない仕事をさせられており、逃げ場もなかったかもしれないことが問題になっている。

例えていえば人間ピラミッドを最下層で支えていたということになる。上にいる人たちより圧倒的にストレスが高いのだ。「電通の社員なのだから最下層とはいえないのでは」という反論が予想される。たしかにその通りで、このストレステストに合格した人たちは下請けの人たちをいじめる側に回る。同じことをさらに弱い人たちにするようになるのだ。

もう一つは高橋さんが置かれていた経済的な階層だ。あまり、言いたくはないが、同じ東京大学でもいくつかの階層があるはずだ。一つはお金に恵まれていて卒業時に借金を背負っていない階層の人である。次の階層は経済的な自由はないが借金を背負っていない人たちである。最後の階層は経済的な自由もなく、かつ謝金を背負っている人だ。もちろんここでいう借金とは奨学金のことだ。

確かに東大卒で電通出身ということであれば引く手数多だったかもしれないが、それは3年以上いてなんらかの実績をあげていることが前提になる。群れの最下層であるということは、実績も上げられないということであり、したがって電通から出ることはできなかったはずなのである。このようにして搾取される人は才能があっても努力し続けても搾取され続けることになる。

ということで、これは格差問題なのだということがわかる。あとはなぜ格差問題が悪いかということを議論すればよい。この格差の大半は「どの家庭にどの性で生まれたか」ということで生じているようだ。本来ならば生産性の高い分野に割り当てられるべき人たちがボロ雑巾のように使い捨てれていることが問題なのだ。

多くの人はまじめに努力したりしない。最低限の作業だけをこなし疲弊しないように体力を温存する。「国力」というものはこうして衰退してゆくものなのだろう。

これを見て高齢者は「最近の若者は覇気がない」と檄を飛ばす。そもそも若者に支えてもらえないと生きられない上に、自分たちはうまくやって勝ち抜けてきたという気分があるからではないかと考えられる。

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