カジノの入退室管理にマイナンバーをという悪夢

恐ろしい記事を見つけた。カジノの出入りにマイナンバーカードをつかえばいいじゃないかというのだ。だが、なぜ恐ろしいのかわからない人が多いのだろうなあと考えると余計恐ろしくなった。

システムを作る時には機能、セキュリティ、ネットワークなどの要件を決める。マイナンバーカードの当初の目的は、国民の財産や収入を把握することだろう。つまり、国家が納税などを管理するためのものだ。当然国民には何の利益もないが、効率的な政府運営のためにいやいや協力してあげているというのが正直な気持ちだろう。

財産はプライバシーの最も重要なものなので、そもそも国家がそれを把握するのはどうかという議論があるが、安倍政権はとりあえずその議論は「ネグって」しまった。だが、もう決まってしまったことなので、あとは政府がことの重大さを十分意識した上で、なんとかしてくれることを期待するしかない。

だが、政府は国民のプライバシーをかなり軽く見ているようだ。そのあと様々なIDとしてマイナンバーカードを使ってはという意見が出てきた。IDとして便利だからだろうが、それは機能が次々と変わることを意味する。

ただでさえ厳しめの要件のあるマイナンバーシステムを年金の記録もれなどでおなじみの(記憶が確かならまだ解決していないはずだ)日本政府が実施するわけである。何か起きないと考える方がおかしい。ただ、やると決めた以上は、最善の努力を払ってセキュアなシステムを作るべきだ。

だが、政府は次々に新しい要件を加えようとしている。この例だとカジノの運営会社がマイナンバーシステムに接続するようになる。いわばパチンコ業者さんが銀行と同じようなシステムを扱うという提案だ。ポイントカードや消費税の払い戻しにも使うと言う話もあったので、小売業者にも開示するつもりだったのだろう。普通に考えるとどこかから漏れることになる。ごめんなさいでは済まない。

「要件を決めないままでシステムを作る」というのはプログラマにとっては悪夢でしかない。これをまともにやろうとするとセキュリティを甘くすることになる。技術力を結集して素晴らしいシステムを作るのも不可能ではないだろうが、お金と労力がかかる。要件が変わるたびにすべてやり直す必要が出てくる。こうした余分な費用はすべて国民の税金だ。役人の思いつきのためにいくら使うつもりだということになる。

過去の要件がすんなりわかればいいのだが、大きなシステムだと過去に何を決めたかがわからないということが起こる。担当者がいなくなったとか、定年したとか、過労でぶっ倒れたなどということはしょっちゅうだ。過去の要件がよくわからないままシステムを継ぎ足すことになるだろう。悪いシナリオしか想定できない。

多分、霞ヶ関の人たちは「お金を積めばなんとかなる」と考えているのだと思う。一次受けもシステムベンダーに頼めば何とかなると考えているはずだ。そうやって危険にさらされるのは国民のプライバシーだし、穴埋めをするのも国民ということになる。

だから、こうした思いつきのような提案は今すぐやめるべきだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です