日本人が間違いやすい英語とその対策法

最近間違った英語の収集を始めた。間違った英語が生まれる背景には日本人特有の思考形態があると思うからだ。間違いを指摘するのは「こいつ英語も知らないのかよ」ということを揶揄したいわけではないので、ここではあえてお名前は出さない。短い文章ながら、日本人がやりそうな間違いを多く含んでおり、参考になると思ったからだ。Twitterを使えば海外の人とも簡単にやりとりができるので、間違いをあげつらうのではなく、学ぶ価値はあると思う。

文章は下記の通り。

Fans around the world please complain to the Japanese government and Tokyo Metropolitan Government. It is against the closure of Tsukiji.

最初の間違いはパンクチュエーションに関係しており、明確に間違いと言える。命令文には主語がないので「世界中のファンよ」というのを単文にするか呼びかけとして区切る必要がある。

さらに、いろいろ検索してみたが日本の政府は単なる政府を指すので小文字だが、東京都は固有名詞なのですべてキャピラタライズするのが一般的なのだろうが、小文字で政府と書くと一般名詞化する。英語はこういうところが難しい。

Fans around the world, please complain to the Japanese government and the Tokyo Metropolitan Government.

だが、一概に間違いと言えないが直したほうが良いというものもある。つまり「違和感がある」のだが、実は民主主義に対する感覚の違いに原因があるように思える。

日本人はお任せ民主主義なので「政府に文句を言いましょう」というのが文章としてなんとなく成立してしまう。文句をいうが責任は取らないよという意味であり、これは日本人の肌感覚としては間違っていないかもしれない。一方、英語圏には民主主義国が多い。当然英語話者も民主的で積極的な姿勢を身につける。文句を言うは受身的な感じがするので、もっと積極的なraise your voiceとかsend your voiceなどがふさわしいように思う。つまり「あなたの声を届けましょう」というほうが参加している感じが出るのだ。

が、ここまで来てもなんとなくしっくりこない。築地移転に文句を言ったとして、それがどう築地の保全に役立つのかがよくわからないのである。そこで最後の文章が浮いてしまうのだ。直訳すると「それは築地の閉鎖に反する」となり文法上の間違いはなさそうだが、意味が伝わらない。the closureの theをみて「その閉鎖」ってなんだという話もある。これも文法的には正しい。つまり、築地閉鎖をtheと言っているわけである。が、文章を読んでもthe closureが築地閉鎖のことかはわからない。なぜなら文章の中で築地が閉鎖されるとは言っていないからである。この辺りが英語はものすごく理屈っぽい気がする。

日本語を最大限に想像すると、みなさんが声をあげたら築地に反対することになりますというような文章が作れる。そこで、観光客の反対運動の盛り上がりは築地の閉鎖への反対を意味するというような文章は作れるのだが、これもなんだかしっくりこない。反対が盛り上がっても東京都が取り上げなければ意味がない。そこで次のような文章が考えられる。

  • みなさんの声が強まれば、東京都庁は移転を再検討するでしょう
  • 東京都庁は観光客の反対意見を真剣に受け止めるでしょうから声をあげてください。

が、これもなんとなくしっくりこない。なぜならば発信者と反対をしている人の関係がよくわからないからだ。それらを総合的に考えるとこんな文章になる。おそらく原文の日本語(つまり、伝えたかったこと)とは違ってくるのではないかと思う。もちろんこれが完全に正確かどうかはわからないのだが、とりあえず伝わるレベルにはなったと思う。Twitterは長く説明ができないので、文章を詰め込むのが意外と難しい。

みなさんが声をあげて私たちを助けてください。東京都はこれを真剣に捉えるでしょう。

  • Please raise your voice to help us. The Tokyo Met Gov will take it seriously if they know tourist are against the moving of the fish market.
  • Please support us by raising your voice. Louder voice will make the Tokyo Met Gov to reconsider the moving of Tsukiji.

当初、この文章に関して考え始めた時には、名詞や動詞は辞書を見ながら訳せるがからとかたらといった助詞の適切な変換が難しいのだという論を考えていたのだが、実際に分解して考えてみると文法以前の考え方の違いが問題になっているのではないかと思った。

この文章は(多分だが)外国人に対して築地移転に反対するように (正確には声をあげて反対運動を支持するように) 呼びかけているので、そこをダイレクトに表現したほうが良い。だから呼びかけた人はその声を集めて都庁に伝えるリーダーのような役割を持っていることになる。

しかし、日本人はインダイレクト(ほのめかすような)なコミュニケーションを好み、責任を取りたがらないので、元の文章には「私が声を届けますから助けてください」というニュアンスがないことがわかる。そこは「含んで」いるのかもしれないが、英語では伝わらない可能性が高いだろう。

このように文化的にかなり違いがあるので、最初から英語の文章を組み立てたほうが、より伝わる英語表現ができるのではないかと思う。つまり「文法的に正しい」ことと「伝わるかと」ということはちょっと違ったことなのではないかと思う。

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