新型コロナウイルスとデマ – 何がフェイクニュースかを見分けることはできるのか

武漢コロナウイルス騒動では様々な噂が出ている。最初に目にしたのは「武漢にはウイルス研究所がありそこからウイルスが漏れたのではないか」という噂だった。

さらにHIVウイルスと同じタンパク質があり混ぜ込まれたのはHIVウイルスなのではないかとほのめかすようなTweetも目にした。さらにHIVの治療薬がコロナウイルスに効いたという知見が現れて「何が本当なのか」わからなくなっている。




最終的には「コロナウイルスは飛沫感染するエイズウイルスだ」という噂にもなったという。「似ている」という当初の論文が「人為的に挿入した」という話になったそうだ。noteで広まったところから「読んでもらうために多少煽った」ものが次第にショッキングな内容に変わっていったのではないかと思える。書き手のちょっとした工夫が積み重なった結果だと考えると恐ろしい気がする。

だがネットを全て遮断してしまえとも言えない。ネットは噂を広めもするが抑止もできるからだ。東日本大震災で流れた噂を抑止したのはTwitterだったそうだ。朝日新聞は自社の記事がTwitterに乗って伝わったと主張しているが、Twitterがなければ噂の拡散が勝っていた可能性が高いのではないかと思える。

東日本大震災の時は不安からデマが飛び交ったが、最近ではお金を払って噂を広める行為も蔓延している。アメリカでは政治系のニュースからフェイクニュースを排除しようという動きはある。だが、最終的には「政治宣伝の広告をすべてストップする」か「自己責任で選別してもらう」という二者択一になっているようだ。結局「プラットフォームとしては対処ができない」というのが結論なのだろう。

今回のコロナウイルスの件は更に複雑である。いわば不安煽り型と政治宣伝型のハイブリッドなのだ。今回目立っているのは中国への敵意を煽るような内容だ。最初にこのニュースを流したのはアメリカの軍事関係のジャーナリストのようだ。「新型肺炎、米メディアが報じた「研究所が発生源」説」では古森義久さんがそれを紹介しているところから、中国に対する対抗意識は感じられる。エチオピア出身のWHOの事務局長は中国に配慮した行動や発言が目立ち、そちらの方も攻撃材料になっているようである。遠藤誉さんが「習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす」と煽っている。こうした事情を割り引いて考えないとそもそもニュースが読めない。面倒な時代になったものである。

ついに時事通信までが「ウイルス兵器説」を両論併記した記事を流した。「新型肺炎、くすぶる「兵器用ウイルス説」 当局に不信感―中国」というタイトルから中国当局への不信感をほのめかす内容になっているが、両論併記しているので余計タチが悪い。おそらく読者は信じたいことしか信じないだろうし、それを狙っているのではないかと思える。

こうなってしまうと、様々な「情報」が飛び交い、何が本当なのかがわからなくなる。ちなみにウイルス・生物兵器でニュース配信サイトnordotを検索したところ、情報そのものとデマの対処をしたという記事が混じり合っていて、もはや何が正確な情報なのかがわからない状態になっている。「たくさん読み比べれば真実がわかりますよ」というのはもう過去の話なのかもしれない。

そもそも今回のコロナウイルスは流行自体が当初はデマだとされていたそうだ。最初に警告していた医師は「デマを流布した」として当局に摘発されていたという。だから、不確かな情報には耳を塞ぐべきだというアドバイスも適当ではない。

日本人は社会科を教科書で習うので「物事には教科書に書かれるべき正解があるはずだ」と信じてこんでしまうことがある。ところが実際に社会に出てしまうとたいていの物事には白黒はっきりしない部分がある。これが戸惑いを生む。

これを一人でチェックするのは不可能なのだから、お互いに持っている情報を持ち寄って確認しあうしかない。私たちが情報交換をするのはできるだけ正確な情報を見つけ出すためであっていつ終わるともしれない闘争をするためでも不安を煽るためでもないはずだ。

そのためには出典を明確にした上で「解釈なしに」情報を比較する練習をしなければならない。だがTwitterを見ると出典を示した上で情報を発信する人はごくわずかである。Twitterも感情の不法投棄現場になっている。

さらに日本人の公共に対する不信が話し合いを難しくしている。公共がない、他人に関心がないという話をすると同意してくれる人は多いのだが、では一緒に公共を作りましょうと言っても誰も乗ってこない。他人を非難したり攻撃することに慣れすぎていて、自分から行動するということを完全に忘れてしまっているのかもしれない。

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