ジンの歴史とボンベイ・サファイア

最初のきっかけは「高級な(プレミアム)ジンが再流行している」という記事だった。缶酎ハイが市場を席巻しているのでその反動があるのだろう。そもそもジンというお酒にあまりいい印象を持っていないので調べて見たのだが、そもそもジンを扱っている店が少ない。ファミリーマートがなぜかボンベイ・サファイアを扱っているのだが一瓶が税込で1,000円以上もする。一ヶ月以上迷って結局買わずにいた。

10月に入ってやっと購入した。




importedというラベルがうやうやしい感じである。ラベルの脇には世界中から輸入したという10種類の植物成分が入っているという触れ込みが書いてあった。

ジンというお酒はもともと修道院で作っている薬用植物のアルコール漬けだったようだ。現在のジンの原型はフランシスクス・シルヴィウスという医師によってオランダで発明された。オレンジ公ウィリアム(ウィリアム3世)の時代にイギリスに持ち込まれたそうだ。

自然に作られたビールやワインなどからさらに水分を抜いてより純化した酒を蒸留酒というそうである。蒸留酒は癖や匂いがない方が高級とされる。このうち白樺の炭で濾過したものがウォッカであり、植物で香りづけしたものがジンと呼ばれている。ボンベイ・サファイアは蒸発したアルコール分を植物成分の中に通すインフュージョンという仕組みで香りづけをするそうだ。

アルコール分が強すぎるので普通は調整された植物水(トニックウォーター)などで割って飲む。癖がないのでカクテルにも用いられる。日本ではサントリーがビーフィータを扱っているが、ジンとウォッカが色違いで置いてある。

蒸留技術が発展し安価なジンが作られるようになったことでジンはイギリス庶民に広がる。コーヒーや紅茶などの嗜好品よりもビールよりも安くて手軽に酔える。このためジンはイギリスでは不道徳で格下の酒と認識されるようになったそうだ。

Wikipediaにあるジン横丁の絵(パブリックドメイン)

では実際にはどんな味なのか。まず封を切ってみる。ボタニカルの香りなどわかるのだろうか?などと思ったのだが開けた瞬間にシトラスの風味が広がる。次に47度の原酒ををキャップいっぱい飲んで見た。とても飲みやすく複雑な風味が口に広がる。アルコール度数が高く口当たりがよく(これをスムーズというそうだが)まあ手軽に酔えるという風評は間違っていないなと思った。

だが、これではアルコール度数が高すぎて怖くて常飲できないので炭酸水で割ってみることにした。当然ながらシトラスの香りは残っていて、口の中で回すとなんとなく苦味も感じる。レモンの皮などをかじった時のあれである。だがそのほかの成分はよくわからない。

パーティーなどでジントニックは何度も飲んだことがある。気の利いたところだとレモンなんかが刺してあって「このレモンが風味を作っているんだろうな」などと思っていたのだが違っていた。最初から複雑な香りと風味が漬け込まれていたのだった。単に格下の酒としてありがたみもなく飲んでいたのだが「バカだったなあ」と思った。なんとなくウィスキーを知っているのはエラいと思っていたのだが、ジンにここまでの風味があるとは思わなかった。

このありがたさは中身を調べてみるともっと痛感できる。

主成分になっているのはジュニパーベリーというシダー類の実である。イタリアから輸入しているそうだ。今でも手で落としているようである。

そのほかに世界各地から様々な植物成分を取り入れており「プレミアム・ジン」という酒が大航海時代の産物であったということがわかる。リコリスは中国産のものを使っているそうだ。

ボンベイ・サファイアの歴史はそれほど古いものではなく、1986年に発売され1997年にバカルディに売却されたそうだ。というわけで今のボンベイ・サファイアのウェブサイトはバカルティが作っている。Wikipediaによると欧米で売られているものはアルコール度数が40%でアメリカと輸入物は47%なのだそうだ。

トニックウォーターは植物で香りづけをした水のことだったそうで英語の意味は「調整水」である。ガスの入った調整水に植物で香りづけをしたアルコールを加えるのが「プレミアム」な飲み方といえる。

ビーフィータ(もともとは牛肉喰らいという意味だそうだ)も調べて見たのだがこちらにも9種類のフレーバーが入っているそうだ。ジュニパベリーだけの味を試して見たいがそれはわかりそうにない。

ボンベイ・サファイアを探して色々なコンビニやスーパーマーケットを探して見た。そもそもジンを置いてある店が少ない。現在の量販店はさながら「ストロングゼロ祭り」という感じになっていて酎ハイばかりが並んでいる。焼酎とフレーバーをもっと工業的に安く生産しているのだろう。下手をすると100円以下の価格で売られている。現代版の安いジンのようである。

セブンイレブンに行くとビール・ワイン・ウィスキーなどが売られていた。特にワインの種類が多く人気があることがわかるのだが防腐剤がふんだんに入っているように思える。ワインは流通経路が確立していて「なんとなく高級」というイメージもあるのだろう。ジンとはそこが違っている。

少し大きめの店に行くとビーフィータは置いてある。ジンとウォッカを扱っているようだ。おそらくファミリーマートは親会社の伊藤忠商事が力を入れて置いているのではないかと思われる。ということで(Amazonは別として)ボンベイ・サファイアを入手するのは意外と簡単ではない。

安くボタニカルフレーバーを楽しみたいのならストロング酎ハイ系で十分なので、プレミアムジンはあまり売れないのだろうが一度飲んでみると違いは歴然である。

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