韓国ファッション台頭の裏にある「アパレルの民主化」を理解できないと洋服は売れない

渋谷の井の頭通り沿いにALANDというセレクトショップがオープンしたそうだ。当然全く知らなかったのだがK-POPアイドルも着ているというアパレルアイテムが取り揃えられているという。当面セールはしない方針だという。ついに韓国ファッションに日本人が憧れるという時代がやってきた。これをファッションの民主化という文脈で分析してみたい。政治と文化を関連づけることなど果たしてできるのだろうか。




記事には面白いことが書いてある。店員の選抜基準が「インスタグラムなどでフォロワーが多いこと」だという。日本のアパレル文化は自分たちがまず憧れの対象になりそれを広げるという戦略を取って来た。だが韓国文化はより民主的にSNSを前面に押し出している。かつては原宿のショップのハウスマヌカンが流行の最先端だったわけだが、現在ではSNSの流行をアパレルブランドが取り入れるように変化してきている。顧客主導型の展開と言えるのだろう。

日本のアパレル文化が衰退したのは日本人が「民主主義」を理解できなかったからだと言える。もうおじさん中心の価値観の押し付けには誰もついてこないのだ。日本政治の世界では当たり前に行われている価値観の押し付けがファッションの世界では通用しない。

もちろん要因はそれだけではないだろう。

かつて韓国ファッションというと「偽物」という印象があった。東大門市場の中に雑居ビルでどこから仕入れてきたのかわからない洋服が乱暴に置かれているというのが韓国ファッションだった時代である。安い値段で偽ブランド品などを買うことができた。だが気がつけばK-POPのブランドに日本人が憧れるというような時代になってしまった。

ではALANDが展開するファッションとはどんなものだろうか。一見すると昔のヒップホップファッションのように見える。つまりそれほどオリジナリティはない。体の線が隠れた不良ファッションである。だがそれをかわいい色で来ていることがわかる。もともとの意味が失われて形だけが受け継がれたのだろうということがわかる。かわいくアレンジされたファッションを若者が好む民主的なアプローチで広告しているのがK-POPファッションであるといえる。

民主化といっても単にマーケットから学んでいるだけではない。SNSで何が流行するのかを世論調査してそれを形にする。それをインフルエンサーに着せてさらなる世論を作るのである。循環を作り出そうとしているのだ。

ALANDのインスタグラム

ALANDの事前宣伝のページを見た。もともとアメリカの下層階級のファッションだったHipHopをかわいめにアレンジしたという感じである。元々あった意味は完全に失われていることがわかる。

これを持ち込んだのはおそらく1990年代の韓国のスターたちなのだろうが受け継がれてゆくうちに「カワイイ」に変質している。YGが凋落してBIG Hit Entertainmentが台頭して来たことからもわかるように「不良のかわいい化」である。かわいいのだがなんらかの主張は持っているという感じである。日本人はこの流行の変遷を知らないはずなのだがなぜかこれが受け入れられている。日本のアパレルは自分たちの考えるカッコイイを顧客に押し付けようとして来たことがファッションに空白地帯を生んだのかもしれない。

つまり日本人の若者は購買意欲がないわけでも新しい流行を求めていないわけでもなかった。単に大人の価値観がずれていただけで、若者の洋服離れなどなかったのだ。

中年が韓国を語るとどうしても慰安婦像とか反日のイメージを持ってしまう。だが現在では韓国は憧れの対象になっている。20名のスタッフ枠に800名の応募があったそうである。世代間によってこれほど認識に差がある国も珍しい。

ではなぜ大人たちは若者の流行が理解できないのか。おそらく若者の流行がつまらなく見えるからだろう。

提携したアダストリアはGLOBAL WORK, Nico and, Rageblue, HAREなどのブランドで知られているそうだ。どちらかというと小市民的なブランドを数多く展開している会社である。デパートでは見ないブランドであり「知っている」という人と「全く知らない」という人たちの間で大きな差があるのではないだろうか。

例えばGLOBAL WORKはイオンモールを中心に展開されているちょうだ。バブル期を知っている大人から見ると「全国どこを見ても展開されている」面白みのない店構えにしか思えない。だが、地方在住の若者にとってはファッションとはZOZOTOWNのようなオンラインかイオンモールなのだろう。端的にいうとつまらなくなることが民主化なのである。

ALANDのインフルエンサー戦略はどことなくアバクロンビー・アンド・フィッチ銀座店のイケメンマッチョ戦略を思わせるところもある。

アバクロはアメリカと同じ上半身裸のイケメンマッチョを日本に持って来たのだが定着せずmそのうちブランドによる顧客の選抜が始まった。CEOが「デブはアバクロの服を着るな」と発言し、白人の価値観によるルッキズム(外見至上主義)が敵視されるようになった。ハフィントンポストによるとこうしたルッキズム発言が行われたのは2006年ごろのことだったようだが実際に炎上したのは2013年だった。

アメリカのこの動きは実は政治と連動している。2009年にオバマ大統領が誕生すると「白人中心の美意識」が攻撃されLove Yourself運動とも言えるべき復権運動が起こる。つまりファッションが民主化したのである。白人の美意識を押し付けるアバンクロンビー・アンド・フィッチはこの流れに乗り遅れた。そして、CEOが辞任に追い込まれたのはオバマ政権下である。そしてその反動としてトランプ大統領が誕生するわけである。

このようにアパレルの流行を知りたい人は政治にも注目する必要がある。政治は意外と世界の風の変化を体現しているのだ。

渋谷にALANDができたことからもわかるように渋谷そのものはまだ流行の発信地ではあり続けているようだ。だが、アメリカは若者の憧れの中心ではなくなりつつあるようである。かつて若者のファッションというとジーンズだったのだがジーンズメイトはついに渋谷から撤退したそうだ。

トランプ大統領の登場により「アメリカはもはや世界のお手本ではない」ことが明らかになりつつある。そもそも中高生はアメリカが世界の流行の発信地だった頃のことを知らない。日本からそれに代わる流行が出て来てもよかったのだろうが、結果的に取って代わったのは韓国だった。

Google Recommendation Advertisement