予算年度内成立の犠牲になった断らない女こと山田真貴子広報官

また、安倍・菅政権の犠牲者が出た。今度は断らない女こと山田真貴子元広報官である。例によって「戸籍名」は吉田真貴子さんというそうだ。実質別姓で男性からのお誘いを断らずに頑張って来たのに最後に切られてしまった。いかにもかわいそうな人である。だが、このニュースの伝え方を見ていて「予算の犠牲になった」とわからない人もいるのではないかと思った。背景には総務省の複雑な成り立ちがある。だが、もう知らない人も多いかもしれない。




憲法第60条の規定に衆議院の優越という条項がある。衆議院さえ通過すれば参議院で予算が可決されなくても自動的に予算が成立する。その期限が3月2日だった。逆にこの期限をすぎて参議院で成立しないと年度をまたぐことになる。滅多にないので総理大臣の失敗とみなされる。

今回の菅総理の長男が関連していた接待疑惑は「たまたま」予算の時期に重なった上に、山田真貴子広報官が7万円接待を受けていたということが、総務省の調査で「たまたま」わかった。そこで予算審議に影響が出かねない状況になった。

「たまたま偶然」が多すぎる。

当初菅総理大臣は山田さんを守るつもりだったようだ。予算成立後、気心がしれた広報官の存在はますます重要になってゆくだろう。菅総理の力強いリーダーシップを演出しなければ選挙には勝てない。

ところが、このタイミングで野党が菅正剛さんや山田広報官の証人喚問を求めて審議をボイコットすれば予算が年度内に成立しない可能性が出てくる。Wikipediaによると最近では1998年の橋本内閣で一回起きており民主党野田政権で14年ぶりに起きていたそうだ。暫定予算が組まれると各種不払いなどが起きて行政が混乱する。野党に予算審議引き延ばしの意思があったかはわからないが、総理大臣側が「とにかくそれだけは避けなければならない」と焦るのも無理はない。

実際に今の野党がかつてのような暫定予算狙いの国会闘争をやるとは思えない。だが、混乱の可能性がある。これは避けたいとすれば「多少の犠牲はやむを得ない」ということになるのだろう。山田さんはそこで病院送りになった。体調が悪いの、じゃあ仕方ないねというわけだ。

ここまでは常識の範囲なのでテレビであえて解説する政治評論家はいない。当たり前のことを言ってもバカにされるだけだからである。と同時に「わかっている人」たちはここから先を想像しているはずである。

こんな偶然があるはずはないのだ。

おそらくこの時期に菅正剛さんの件をリークすることは計算されていたのだろう。手持ちのカードが最も効果的に切れるタイミングだからだ。

総務省が自治省と郵政省の合併によって生まれたことはよく知られている。今回「粛清された」のは郵政省系の通信を担当している人たちばかりだ。一方それを調査するのは自治省系の人たちだったと言われている。これは秘密でもなんでもない。みんな知っていることである。

総務省は、2001年(平成13年)の中央省庁再編により、自治省、郵政省、総務庁を統合して設置されたマンモス官庁。その総務省に「文春砲」が放った菅義偉首相の長男が絡んだ接待問題は、旧郵政省出身の総務審議官(事務次官級)に連なる大量の幹部が「違法接待」を受けたとして懲戒処分となり、首相官邸や霞が関を揺るがす「大事件」に発展中だ。旧郵政人脈の自壊で、菅首相の「天領」といわれる総務省は、今、旧自治官僚の天下になろうとしている。

「菅首相の長男との”仲間意識”」総務省幹部の規律が緩みきっていた根本原因

記事によると谷脇康彦・総務審議官は菅総理の肝いり政策であるスマホ電話料金値下げを差配し事務次官昇進が内定していたと言われていたそうだ。年次にうるさい官庁では特定の時期に「一回休み」になることは脱落と一緒である。するとライバルである自治省系が巨大官庁を支配することになる。

おそらくこれは権力闘争だったのだ。

こうなると、2月22日のお昼休みに都合よく山田広報官の7万円接待の内部調査が出てきた理由もわかる。朝日新聞が当時の流れを書いているがいかにもタイミングが良すぎる。また国会で説明する総務省幹部は嬉々としていた。彼らはおそらく「勝った」と思っているはずだ。

菅義偉首相の長男が勤める放送関連会社「東北新社」による接待問題をめぐり、総務省が衆院予算委員会の理事会で調査結果を報告した。山田真貴子・内閣広報官が総務審議官当時、接待を受けていたことが明らかになった。山田氏は菅政権で、首相の記者会見時に進行役を務めている。

【詳報】13人、1人7万円 驚愕の接待攻勢、質疑一変

おそらく菅総理も自民党の人たちも、自分が自治省系官僚に「刺された」ことを知っているに違いない。だが政治家たちは文句が言えない。自分たちも官庁からのアイディアに頼りきり選挙を有利に運ぼうとしているからだ。

多くの人たちが国の支援や政策に期待していることを考えるといたたまれない気持ちになる。官僚も政治家も自分たちのことしか考えていないのは明白である。官僚たちは出世競争のために予算審議を利用した。新型コロナで大勢の命がかかっている予算より自分たちの出世の方が大切なのである。

マスメディアはこのことにはあまり触れず「予算が年度内に成立することが確実となった」とだけ伝えている。結果的に丸く収まったと言いたいのだろう。面倒なことにはあまり関わりたくないというのがマスコミの本音なのかもしれない。

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