楽天と日本郵政が組むとスマホの国内通話が無料になる

出来レース・プロレスだと思っていたものが風向き次第で俄然面白くなることがあるものだと思った。楽天と日本郵政の提携話のことである。菅総理から見ると完全に想定外の出来事だろう。あるいはベルリンの壁が崩壊したのと同じようなことが日本でも起きているのかもしれない。




菅総理は総務大臣だった時の経験を強みにしようとしている。彼なりの計算なのだろうがどこか稚拙である。

よく答弁の時に「私はふるさと納税制度を作った」と自慢することがある。これは総務省にある自治省ラインの成果であろう。これとは別に「通信行政に詳しい菅総理が携帯電話料金を下げてみせる」というメッセージもあった。カリスマ性のないポピュリストだという自己認識があるのだろう。庶民派を訴えつつもやたらと強いリーダー像を誇示してみせたがる。そしてそれはなぜかことごとく裏目に出てしまう。

誤算はただ一つだ。新型コロナ対策である。日本人はとにかく結果を出さない人が嫌いなので菅総理には支持があつまらない。政治はすっかり厄介ごと扱いされるようになった。これは菅総理が支持される理由を見るとわかる。「よくわからんがそっちで適当にやっておいてくれ」という突き放す感情が世論調査から透けて見える。

内閣を支持する理由(複数回答)は、「他に適当な人がいない」が最多の14.4%で、「首相を信頼する」8.1%、「誰でも同じ」が7.5%と続いた。

内閣支持、35%横ばい 長男接待、対応不十分67%―時事世論調査

支持しない理由も結局は庶民感情だった。国民が外食できず我慢しているのにエライ人たちだけ会食しているのはけしからんというのが今回の会食批判の原点になっている。スマホ料金は携帯会社が下げているわけであって菅総理の仕事だとは思われていない。

会食問題は思わぬところに飛び火する。内情に詳しい人でなければ発見できないような情報が次から次へと出てきたところから内部リークではないかと思う。内閣人事局制度によって歪められた人事が面白くないと思っていた人がいるのだろう。

さらにNTTの話が出てきてNTT再編に関わった次期事務次官候補が「粛清」された。特権がなくなり定年通りの退職に追い込まれたそうだ。そればかりか広報官も退職させられた。菅総理としては自らの人気浮揚に役立つはずだった道具を次々に失ったことになる。人事と食い物の恨みは恐ろしい。

仕掛け人のターゲットは総務省・郵政系の粛清だろう。だが、実際には菅総理がターゲットになってしまっている。これが結果的にそうなのかそれとも狙い通りだったのかはわからない。

NTTの接待は総務大臣経験者にまで及んだことがわかっているのだがこれが政権の支持率に栄養を与えることはなかった。新型コロナウィルスの感染者数が下がると支持率も下げ止まるからである。

そこに突然湧いて出たのが日本郵政と楽天の提携話である。出資額はそれほど大きいものではないので「大した話でない」ように感じられたのだが楽天から見ると8%を超える大型出資になるそうだ。ま

楽天モバイルは電話料金無料、最初の1Gのデータ料金は無料というのが売りになっている。だがどこまでも「怪しい新参の会社」というイメージがつきまとう。実際にオペレーションも不安定だ。

だがそれも過去の話になるだろう。全国の郵便局でも楽天モバイルが扱われるのではないかという。NTT、KDDI、ソフトバンクが窓口を切り捨てて安価なサービスにシフトするのとは真逆の動きだ。つまり、今後楽天モバイルは政府の支配の外側にありつつも「公的なイメージ」を一挙に格上げさせることになる。

背景には国際規格をめぐる競争もある。わかりやすく言えば次世代型LINEである。LINEが普通電話網に接続されると考えると良い。RCSという。

楽天モバイルの国内無料電話にはカラクリがある。それがRCS(リッチコミュニケーションサービス)である。おそらくNTT、KDDI、ソフトバンクはこれが一般化することを恐れている。自分たちの既得権である電話料金が取れなくなるからである。これまでもLINEはあったが主にうちわの連絡に使われて来た。ところがRCSはこれが一般電話網(ただし110・119を除く)につながる。

NTT、KDDI、ソフトバンクも自社のRCSサービス網を持っているのだが国際基準のプラットフォームとは切り離している。これまで法外な通行料を取ってきたが故にLINEのような不便なサービスが代替的に使われてきたのだが、楽天のRCSサービスの普及はそれ以上のインパクトがある。国内電話実質無料の時代がやって来た。

会食問題という「風」から始まった一連の騒ぎはおそらくコロナがなければ起こらなかっただろう。人々が政治に興味を持つことはなかったからだ。だが一旦起こってしまうとなぜか関係がなさそうなところに飛び火して思わぬ壁が崩れることがある。今回崩れそうな壁は携帯電話の通話は高いという常識である。「これまで当たり前だったものが一夜にして崩れる」という意味では、もしかするとベルリンの壁が壊れたのと同じような感じなのかもしれない。あれも当局の発表ミスが招いたことが知られている。

このことを誰かが仕掛けたとは思わないのだが総務省の幹部連中が人事で右往左往しているうちに間隙をついて日本郵政と楽天の提携話が進んだのは確かだと思う。総務省NTT組がプロレス的に管理するはずだった携帯電話料金の話は全く違うフェイズに入ったことになる。

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